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Webイノベーションのトレンド、戦略、組織の在り方に関する考察

Web Innovator 2007 年7月26日 村上知紀 Tomonori Murakami confidential -1- 2008/05/02 目次 ●前書き ●Web イノベーションの動きを知る ・Web イノベーションの現状を知る ・Web イノベーションに働く力を知る ●Web イノベーション戦略を考える ・独自のビジョンを実現する ・Web イノベーションとうまく付き合う ・Webにおける収益モデルと Web2.0 ●Web イノベーター集団を作る ・多様な人の知的インタラクション ・オープンマインドとオープンネットワーク ・価値観と行動規範 ●Web イノベーターになる ・まずは行動してみる ・新しい価値を作る ・ユーザーになりきる ・最高のユーザーエクスペリエンスを提供する ・アテンションを獲得し続ける ●Web イノベーションを起こす ・コンセプトを揉む ・サービスのイメージを具体化する ・設計を考える ・プロトタイピング/ベータテスティング ●日本におけるWebイノベーション~後書きに変えて Tomonori Murakami confidential -2- 2008/05/02 ●前書き あるビジネス系の SNS で「ネットビジネス研究」というコミュニティを立ち上げたのをき っかけに、アメリカを中心とした Web イノベーションの動きに毎日触れるようになった。 英語の勉強も兹ねて、グーグルリーダーに「TechCrunch」 「Read/WriteWeb」 「O'Reilly Radar」をはじめとする有名な数十のブログを登録し、そこで配信される記事やニュースを 追いかけたのである。毎日それぞれ5件から10件の記事やブログが配信されるため、全 部で200以上もの数に膨れ上がった。 その大量の記事やニュースに溺れそうになりながらも、つぶさに追いかけていくうちに感 じたのは、世界における Web イノベーションの大きなうねりだった。言葉通り、毎日新し いサービスが生まれ、どこかのサービスが買収され、サービスが改善され、招待状が出さ れ、サービスや企業の分析がされ、プレスリリースが発表され、イベントが実施されてい る。それは現在においても続いているし、今後も続いていくだろう。 こうした動きは従来から言われている Web2.0 という言葉では括りきれなくなってきてい ると感じる。 もちろん Web2.0 は多くのコンセプトを含む言葉であり定義にはいまだに議論 があるところだが、 尐なくとも Web2.0 という言葉が生み出された3年前に見えていた世界 観からは確実に進化しているだろう。言葉遊びをするつもりはないが、私の提案は、もっ と大きく Web イノベーションと捉えるということである。そうすることで、より広くより 正しく現象を捉えることができ、本質に迫ることができるはずである。 とにかく膨大な情報に触れることによって日々のWebイノベーションの動きを分析し考 えてきた。本書は、こうした観察や分析とこれまでの Web のサービス戦略・企画・設計・ 組織などのコンサルティング経験を元に、Web イノベーション動きとその動きに隠れてい る本質を記述したものである。 具体的には、まず Web イノベーションの現状とそこに働く力をあぶりだした。次に Web イノベーションをどう戦略に取り入れるか、組織はどうあるべきか、その指針を示し、次 に Web イノベーターたる価値観と行動規範を明らかにした。 最後に、 実際に Web イノベー ションを起こすためのプロジェクトの進め方を提案している。 日本ではまだ本格的な Web イノベーションが起きていない。単発では面白いサービスが出 てきているが、ムーブメントにまでなっていない。しかし今後、必ずそうしたうねりが日 本でも起きてくると信じている。 Tomonori Murakami confidential -3- 2008/05/02 その来たるべきチャンスをどう捉えるか、その成功の本質とはなんなのか、どうすれば成 功できるのか。そうした課題を持っている起業家やWeb関連企業の経営者やプロジェク トリーダーや個人など Web イノベーターとしてご活躍いただきたい方を念頭に置きながら 本書を書いた。是非、本書で示した考えを参考にしていただきながら、自身や自分の組織、 チームを成功に導いてほしい。 目に見える現象に惑わされず、本質を知ることが成功や夢の実現の近道である。闇雲に進 んでも不安でまた引き返してしまうかもしれない。本書がその本質と進むべき道を知る一 助になれば幸いである。 Tomonori Murakami confidential -4- 2008/05/02 ●Web イノベーションの動きを知る Web イノベーションの現状 まずは、Web イノベーションの動きを俯瞰してみよう。私が重要であると考えたテーマに 忚じて、実際に提供されているサービスの内容やその背景、今後の展開の予測を簡単に示 している。現時点を一言でいうと、次の世代の方向性がだんだんと見えてきている状況だ といえる。 「ソーシャルサイトの巨大化と細分化」 「次世代検索エンジン群の勃興」 「情報の モジュール化&オープン化」 「Web とデスクトップのボーダレス化」 「セマンティック Web の兆し」 「ブラウザの多様化」 「バーチャルワールドの拡大」という7つに分けて説明を試 みた。個別のサービスの内容は既に知っているものばかりかもしれないが、その位置づけ を理解し、今後の方向性を考えるヒントになればと思う。 ○ソーシャルサイトの巨大化と細分化 ソーシャルサイトとは社会や他人とのかかわりの中での人間の根本的な欲求を満たすよう なサービス群である。例えば、他社とのかかわりの中で考えると、新しい友人・知人、仲 間を作る欲求、友人・知人、仲間とコミュニケーションする欲求、社会に貢献する欲求、 人に褒められる/評価される欲求、教えたい/見せたい欲求、人からなにかを知る/教えてもら う欲求、他の人と共通の体験を持つ欲求などが存在している。この中で、他人とのコミュ ニケーションする欲求をベースにリアルにおけるネットワークを維持・拡大するようない わゆるSNSと、それ以外のなんらかのテーマにそってユーザーが参加・コミュニケーシ ョンするようなサイトとの2つに分かれる。 前者は、MySpace、Facebook、Bebo など巨大化が進んでいるとともに一方で異常なまで に細分化している。例をいくつか挙げると、ベビーブーマーのためのSNS、忙しい母親 のためのSNS、ペットのSNS、仕事探しのSNS、パーティフリークのためのSNS、 アート好きのためのSNS、レシピ共有SNS、ご近所さんのSNS、旅行に特化したS NS、服大好き人間のための SNS などである。後者は、ソーシャルブックマークやソーシ ャルニュース、Twitter、Jaiku、Pownce のようなメッセージ共有、YouTube や Meta Cafe などのビデオ共有、Flickr のような写真共有、ウィキペディアや Freebase や家系図作成な どの社会・集団貢献系サービスなど続々とサービスが出てきており、これも既存のものが 巨大化し、新しく出てきているものは細分化されていっている。ユーザーが興味のテーマ は尽きないであろうから、今後も更に隙間を狙ったソーシャルサイトが出現してくるであ ろう。と同時に1人でいくものソーシャルサイトを維持することは面倒なので、アカウン トやサービスのアグリゲーションサービスも出てきている。社会や他人とのかかわりの中 での人間の根本的な欲求を満たすようなサービスが、そのままオンライン上において拡張 Tomonori Murakami confidential -5- 2008/05/02 されるという意味で人間の本質的なニーズに答えていると言える。つまり、本質的である がゆえに、他の情報や機能と複合的に価値を生み出したり、他の機能やコンセプトにソー シャルな要素が追加されたりする動きが今後ますます加速するであろう。 ○次世代検索エンジン群の勃興 検索というのは非常に強力なコンセプトである。サイトに訪問する中の4割が検索エンジ ンを利用しているという。アメリカではグーグルの検索シェアが50%を超えるが、その 支配に挑戦しようと数々の新しい検索エンジンが出現してきている。いくつか例を挙げて みよう。対象や分野を絞った検索エンジン(バーティカル検索、人物検索、ビデオ検索) 、 検索の方法に挑戦している検索エンジン(ガイドによる検索、登録ベースのサーチエージ ェント、レコメンデーションをランダムに提案する検索エンジン) 、インプットを拡張しよ うとしている検索エンジン(自然語検索、音声検索エンジン、画像検索エンジン) 、表示を 工夫している検索エンジン(プレビュー表示、クラスター表示、自動展開)などである。 現状のいくつかの単語ベースでのユーザーの意図やコンテクストを伝達したり、それに合 った結果を表示はやはり限界がある。より動機や目的を伝え、最小限の労力でほしい情報 を見つける方法が出てくるまで進化を続けるはずである。 ○情報のモジュール化&オープン化 基礎となっているのは情報のオープン化の流れである。これまでであれば資産として自社 に抱え込んでいた情報を惜しげもなくオープンにして、 積極的に利用している。 Google Map などの地図を利用したマッシュアップの数が一番多いが、他にも Flickr の写真,Amazon の 商品情報など API 公開された情報が利用されている。情報を抱え込む時代は既に終わって いる。そうではなくオープンにして他のサービスに利用してもらうことで、認知や話題や トラフィックといったリターンを得るのだ。またそれと同時に情報のモジュール化の動き も深く進行している。ウィジェットの提供である。それらは、多くのブログやマッシュア ップサービスに取り入れられ、更には、ユーザーごとにパーソナライズされたスタートペ ージを作ることが出来るような netvibes や Pageflakes、iGoogle などが出てきている。こ うした動きは、Web"サイト"や"ページ"という古い概念から、アプリケーションや情報が有 機的に結びついたサービスへと向かっていることを示しているのである。 ○Web とデスクトップのボーダレス化 既に Web スペースとデスクトップスペースの間の境がぼやけてきている。これまでデスク トップのものであったアプリケーションが次々にオンライン化されつつある。例えば、マ イクロソフトのワードとエクセルに対抗するグーグルの Doc&SpreadSheet や zoho、それ 以外でも、カレンダー、コラボレーションソフト、データのストレージなどがオンライン 上で続々と提供されてきている。 またそれだけでなく WebOS と呼ばれるデスクトップをそ Tomonori Murakami confidential -6- 2008/05/02 のまま Web 化したようなサービスも出てきている。逆に、マイクロソフトも LIVE 戦略を 打ち出しデスクトップ側から視点で Web の融合を図ろうとしている。また、アドビから AIR=AdobeIntegrated Runtime という開発環境がリリースされた。 これでオフラインでの アプリケーションの開発が容易になり、ローカルのデータをうまく利用しながらオンライ ン、オフラインをうまく連携したアプリケーションの開発が可能になった。これを受けて 今後様々なアプリケーションがリリースされるであろう。とにかく、今後ボーダーは更に ぼやけていくだろう。 ○セマンティック Web 概念自体は前からあるが、 近頃 Web2.0 の次はなにか、 という文脈で Semantic Web という 言葉がよく使われる。 "The Semantic Web is a web of data","Data Web"といわれるように、 Semantic Web は基本的にはドキュメントの交換からデータ自体の交換のネットワークに になるということである。コンピューターが読める標準的なフォーマットで形式化&意味 づけされたデータが、 関連付けられやすくなるということである。(Semantic という言葉自 体は、語義の、意味(論)の、という意味)Semantic Web が人間から見て意味があるため には、どこかでデータを選択、統合して表示するというような機能が必要だが、ネットワ ークにつながったサーバー、PC(ブラウザ、デスクトップアプリ) 、モバイル、車、家電、 研究機器などあらゆるポイントで、縦横無尽にリアルタイムにデータが選択、統合、分解、 表示、利用される、というイメージである。もちろん、ユーザーに対するサービスが革新 されるだけでなく、より大きなインパクトはフォーマットを標準化することによって別々 に位置する膨大なデータの解析や利用なども自動的に出来てしまうというところであろう。 ○ブラウザの多様化 タグブラウザやツールバーの利用、Coop のようにブラウザのサイドスペースを活用したソ ーシャルネットワーク、関連するブログを表示する BlogRovR のような FireFox の add-on 群によるブラウザの拡張されてきているとともに、iTune やグーグルアース、RSS リーダ ーのようなデスクトップアプリケーションもブラウザの代替といっていいものも数多く出 てきている。 2億を超えるユニークダウンロードがあるグーグルアースから KML ファイル のサーチが出来るようになったり、ユーザーがハイキングしたルートや写真、ビデオなど の情報が見れる GPS を利用したサービスも提供している。 また、 FireFox3の構想として、 Web ページの表示という基本的な機能から発展し、Semantic Web の流れを受けて、自由 に Web 上に存在するアプリケーションやデータを組み合わせることができるインフォメー ションブローカーとしての役割を演ずるというものまで出てきている。 ○バーチャルワールドの拡大 バーチャルワールドの動きも活発である。アバターとなってバーチャルな世界で人と出会 Tomonori Murakami confidential -7- 2008/05/02 い、コミュニケーションをし、生活し、土地を買い、建物を立て、金を稼ぐ。ご存知のよ うに火付け役である Second Life は、リンデンラボが運営するバーチャルワールドである。 コンテンツのほとんどが、ユーザの手によって作り上げられている。企業もマーケティン グでの利用が活発になっている。Second Life の流行りに続けと、韓国の MapleStory や、 中国でも Hipihi、ソニーが買収した Club Penguin など同種のサービスが続々と出現して きている。よりリッチなユーザーエクスペリエンスを楽しめることもあり、今後も更に多 くのバーチャルワールドが出現してくるであろう。個人的に期待しているのは、リアルな 世界とうまくリンクしたようなバーチャルワールドである。例えばグーグルアース上で1 レイヤーとしてバーチャルワールドが展開されたら面白い。 このようなWebイノベーションは米国だけではなく、世界各国において起きている。例 えば、既に言及しているが中国におけるバーチャルワールドである hipihi やビジネスウィ ーク誌にも取り上げられていた韓国のファンタジー調のオンラインゲーム MapleStory、中 国において 30%以上ものシェアを誇るブラウザである Maxthon、そして日本の Mixi やモ バゲータウンの DeNA などのようにアジアにおいてもいくつも新しいサービスが出てきて いる。ヨーロッパに目を転じて見ても、スカイプ(ルクセンブルク)はいうに及ばず、イ ギリスの音楽サービスの last.fm やパーソナライゼーションの Netvibes(フランス)や Pageflakes (ドイツ)がある。イギリスで人気のある Bebo もあるだろう。パリが本拠の DailyMotion は世界最大級の動画サイトである。 この5月にも StartUp2.0 というスタート アップ企業のコンテストに300社以上の企業の忚募があったとのこと。優勝したのはス ペインのビデオ共有サイトである Sclipo だった。多尐毛色は違うが、トルコ人のグーグル のエンジニアが作った Orkut は、ブラジル人の利用が半分以上を占める。いくつか新しく ある程度有名な例のみを挙げていみたが、実際の各国、各地域におけるスタートアップ企 業の数は数え切れない。 アメリカ、そして世界の Web イノベーションを簡単に俯瞰したが、まだ本格的な革新はこ れからである。 方向性としては、 いくつか挙げた方向に更なる発展をとげていくとともに、 想像もしていなかったような組み合わせでイノベーションが今後も起きてくるはずだ。そ して、それらが世界中のまだ夜明け前の国々に波及していくのである。 Tomonori Murakami confidential -8- 2008/05/02 Web イノベーションに働く力 このように様々なイノベーションが起きているが、実際そこに働いている力は非常にシン プルである。 ここで、 Web イノベーションの世界の FAW を見てみよう。 FAW とは、 Forces At Work という言葉の頭文字をとったもので、業界に働く力関係や構造を分析・理解する ための視点の1つである。主要な登場人物を挙げていき、それぞれの間に働く力を見てい く。 ご存知の通り、花形スターはユーザーである。全ての登場人物の中で最大の力を持ってお り、ステージの中心に存在している。ユーザーは一般的なカスタマーの場合もあれば、開 発者だったり、広告主であったりと色々な顔を持つことが特徴である。Web におけるサー ビスやツールの利用者である。 次に出てくるのが、花形スターであるユーザーに価値を提供するサービス提供者である。 いわばスターに仕える従者である。花形スターのために、サービスやツールを提供してい る。それは時には、場そのものであったり、情報であったり、商品であったり、体験であ ったりする。そうした価値と引き換えに一生懸命にスターのアテンションや時間や貢献や お金を得る。 次は、サプライヤーである。リアルなビジネスで言えば、生産財や部品などの提供者であ る。通常リアルビジネスにおける提供価値は様々なサプライヤーを結ぶサプライチェーン を通ってユーザーに届けられる。しかし Web の世界では「プロシューマー」と呼ばれるよ うにユーザーがプロデューサー(生産者)であり、コンシューマー(消費者)でもある。 言ってみればユーザーが1人2役を演じているのだ。 花形スターに仕えるべく次々と出てきているのが、サービス提供の新規参入者である。イ ンフラなどのコストの低さ、サービス実現の技術的な容易さ、人的リソースの調達の容易 さなど敷居の低さを利用して、どんどんと参入してきている。これらは、既存のサービス 提供者にとっての競争相手となる。 こうした数多くの新規参入者が出現する背景には、成功して出て行くイメージが持てるか らでもある。その成功イメージの大本が、既に成功した巨人である。例えば、グーグル、 ヤフー、マイクロソフト、eBay、IAC、ニューズコーポレーション、などだ。こうしたW ebだけでなくメディア企業も含めて、数多くの買収してくれる企業の存在がある。 「エコ システム」と呼ばれるが、新しい参入者が入ってきて、やがて出て行くという循環される 環境になっている。 Tomonori Murakami confidential -9- 2008/05/02 このような「エコシステム」があるからこそ、そこからリターンを得ようとするもう一人 の登場人物である資金提供者が現れる。ベンチャーキャピタルやエンジェルファンドであ る。こうした資金提供者の存在によって、サービス提供者も新規参入者もこのステージで 生きていける。 最後に、忘れてはならない登場人物は、メディアである。サービス提供者とユーザーをつ なぐために強い役割を果たしている。しかも、花形ユーザー自らがブログなどでメディア の役割を果たすこともある。先に1人2役といったが実際は1人3役で出る場合もあるの である。 このような花形スターとしてのユーザー、そのユーザーが同時に演じるサプライヤーとメ ディア。ユーザーに仕えるサービス提供者と数多の新規参入者。それを支える巨人達や資 金提供者。このような登場人物がステージに上がることで、Web イノベーションの世界が 成り立つのである。 ユーザーが花形である所以は、1人3役を演じることもあるが、重要なことは、ユーザー に対してサービスの提供者の数が多いことである。 私が観察する限り、Web イノベーションの世界では、どういったサービスであっても、複 数の直接的な競合となるサービスが存在している。たとえある時点で存在しなくとも、尐 し待っていれば、必ず雤の後のたけのこのようににょきにょきと出現してくるのである。 ユーザーが1人であり、それに対して例えば3つのサービス提供者がいるとすると、ユー ザーにとっては、3つの選択肢があるということになる。つまり、一番よい1つの選択肢 を選べばよい。逆に3つのサービス提供者のうちの1つにとっては、1人のユーザーに選 んでもらうための多大な努力が必要となる。 Web の世界は、次から次へと競争相手が現れる異常ともいえる競争の世界であり、それが ユーザーを花形スターたらしめている要因なのである。 実は、このユーザーが花形であるという構造は、リアルのビジネスにおいても基本的には 変わらない。違うのは、その程度である。リアルのビジネスにおける基本も顧客中心であ る。ただ、Web と同じ程度の競争環境にある業界はない。Web の世界では、ハードルが低 いために次々に新しい競合が参入してくると同時に、ユーザーからは、クリック一発でス イッチされる環境にある。つまりリアルでは考えられないような競争環境になっているの Tomonori Murakami confidential - 10 - 2008/05/02 である。 Web イノベーターとしては、 まず、 このような Web のユーザーが花形であるという力関係 や異常とも言える競争構造を完全に理解することが出発点となる。もちろん環境によって 競争の度合いなどは変わってくるが、本質的な構造は変わらない。 このような競争環境において、ユーザーに選択され続けるためには、どうしたらよいのだ ろうか。無数の石の中から宝石を見つけてもらうためには、光るしかない。まずは、ユー ザーの注意をいかに自分にひきつけるかがポイントとなる。いわゆるアテンションである。 当然、ひきつけるだけでは足りない。ユーザーにサービスに満足してもらい再利用をして もらうためにも、ユーザーが期待する価値を提供することが必要である。そして、更に何 度も利用してもらうためには、 期待に合っているレベルを超えて、 期待を超える必要がる。 そうでなければ簡単に競合サービスにスイッチしてしまうからである。 既に説明したように、Web とリアルのビジネスとの違いは、その程度である。それは結果 としてユーザーに対する態度の程度として現れる。つまり、このユーザーの注意をひきつ け、期待以上の価値を提供するという態度の程度に現れるのである。 Web イノベーターであれば、ユーザーの期待値を超える真に新しい価値を提供し続けるこ とを忘れてはいけない。これはついつい忘れてしまいがちなので、強迫観念のように常に 思い出す必要があるのである。 Tomonori Murakami confidential - 11 - 2008/05/02 ●Webイノベーションを戦略に取り込む 独自のビジョンを実現する 企業価値は、通常将来のキャッシュフローの予測を元に計算する。つまり、現在ではなく 将来、どれくらいのキャッシュを生み出すか、ということに対する判断が現れているとい ってよい。別の言葉でいうと、未来という視点からの判断を受けているといえる。現在で はなく未来にどうなっているだろうか、ということである。 もちろん、特にWeb関連の企業がからむM&Aの世界では、合理的な計算を超えた、信 じられないくらいのプレミアムが付く例は枚挙にいとまがない。当然であるが、上場して おり、時価総額が高ければ、それを利用して他の企業の買収ができてしまうし、企業価値 が高ければ、高い価格で自分の会社を売ることができる。まったく同じように低ければ、 逆に買収されることにもなりうるし、安い価格でしか売ることができない、というのが市 場の論理である。このような、時価総額や企業価値そのものが打ち手を決める巨大で重要 なリソースである時代にあっては、それを決める投資家の判断が重要で、その投資家の視 点は未来にあると言ってよいだろう。 つまり、キャッシュを未来にどの程度生み出しそうか、その構想が勝負を分ける重要な視 点なのである。実際は、本当にどれくらいキャッシュを生み出すか、というよりも、どれ くらい生み出しそうか、という幻想も含めた期待感で決まってくるといった方が正確であ ろうが。いずれにせよ未来という視点であることには変わりない。逆に、あまり未来がな さそうと思われると株価や企業価値に悪い影響を与えるのである。 翻って、周りを見渡してみると、そういった未来のことを気にしているよりも、目に見え るこれまでの競合企業の動きに目を奪われていることが、ほとんどではないだろうか。競 合が始めたサービスをこちらもやる、やられたらやり返す、といったように、気にしてい るのは、売上げ規模や業態の近い競合の場合が多いであろう。 前を走っている競合企業が支配しているパターンに乗りながら、後ろから追いかけて、勝 つことは難しい。たとえ勝ったとしてもまた負ける可能性もある。そうこうしているうち に全然別のところから入ってきた新たな参入者にごっそり市場を奪われてしまう可能性も ある。一旦「競合に負けない」という考えに囚われた企業が、ルールを変えるべく新機軸 を生み出し、信念を持って突き進み、競争を制することはかなり難しいことである。 競合のトラフィックを追い抜くために競合がやっているようなキャンペーンを行うとか、 Tomonori Murakami confidential - 12 - 2008/05/02 先を行く競合に追いつき、追い越すことを目標とするとか、競合が持っている機能を全て 洗い出し、足りない機能を追加していくなどである。また、誰にも未来は見えないし、成 功するかは未知数であるから、 ”正しい戦い方”を外に求めてしまうことや負けない勝負を してしまうこともある意味、しょうがないのかもしれない。 これは、世の中に同じサービスを提供している企業の数が固定化されており、かつ将来的 にもそれが続くのであれば、別に問題ないのかもしれない。2人だけでマラソンをしてい るようなものである。 しかも、競合といっても、実際は、目に見えているものではない。考えられもしなかった ところから出現し、ユーザーを奪っていくというのは、よくあることである。典型的な例 として、雑誌による専門情報を提供していたが、ユーザーが作り出す膨大な情報との差別 化することが難しく、ユーザーの利用もそちらへ流れていってしまったという場合である。 とにかく、どこからどう収益の源を、見ず知らずの競合に奪われるか、分からない状態で あるといってよいであろう。 通常は、目に見えないことを実感することは難しいし、証拠がないので人に説明したり、 説得したりすることが難しい。否定的な見方がまかり通っているような組織であれば、な おさらである。売上げなどの収益の指標をじっと見ていてもなかなか気づくことができな いという点もある。 車を運転していて、道を歩く美女に目を奪われている間に、あっという間に別の車に追い 抜かれてしまうように、横や先にいる競合に囚われているうちに、どこからともなくやっ てきた相手に市場を奪われてしまうことが往々として発生するのである。 見るべきは、未来であって、他の企業ではない。自分に見える未来を実現していくことに 対して、当然、投資家も支持するであろうし、それだけでなく、ユーザーも現在、そして 将来の従業員も魅力を感じ、多くの中から企業やサービスを選択をするのである。 Web イノベーションの世界は、1万人が1万個のボールを追いかけるマスフットボールの ようなものである。全ての人が自分の思い描くゴールを目指してボールを蹴っていく。足 の速い他人を追いかけていったり、一つのボールをめぐってこぜりあってもしょうがない。 自分のボールを他人に取られないようにきちんとキープし続けられること、自分の選んだ ルートや方法やペース配分で自分のゴール目指すことが、最重要事項である。 つまり、それは、企業としての価値を高めるためには、独自のビジョンを持ち、それを実 Tomonori Murakami confidential - 13 - 2008/05/02 現することが王道であるということである。やはり、ここでは、独自であるというところ を強調したい。独自でなくても、ビジネスは成功するかもしれないが、未来への期待感が まったく変わってくる、イコール、投資家からの評価やユーザーからの評価、働く人から の評価にも最高によい影響を与えていくということなのである。つまり、価値が高いとい うことである。 独自のビジョンを持ち、その実現をしていくこと。つまり、独自の顧客、独自の提供価値 と、それを実現するビジネスシステム、組織を実現すること、またそれを保持し続けるこ と、また、それによって企業やサービスが突出した存在となり、話題を集めユーザーを集 めること。競合は自らの独自なサービスを実現するための参考程度に捉えること、が重要 である。 では、具体的には、どのように独自のビジョンを持つとよいのだろうか。そもそもビジョ ンとはいったいなんなのだろうか。よく会社のビジョンを持たなければいけないと、社員 が顔を突き合わせて議論したりすることがあるが、たいていそういう方法で考えたビジョ ンにはパワーがない。つまり形式的な言葉の羅列になっていることが多い。それくらいで あれば、時間をかけて作る必要なんてない。なぜこうなるか。ビジョンとは、個人の思い や信念、そのものであるからである。こうしたい、こうなるはずであるという意思をなく して、ビジョンは成り立たない。極端に言えば、その人に見えている世界をビジョンとい っているだけなのである。つまり意味のある生きたビジョンであれば、その人に見える世 界であるわけであるから、基本的には、それは独自の世界であるといえる。 ビジョンという言葉はビジョンとそのまま使われるが、一番近い日本語は、構想という言 葉である。構想という漢字を分解すると、想う、という字と、構造や構成などの構という 字の組み合わせた漢字である。このように、想いを構成すると書くが、構想は、箱がつみ あがった造形物のようなものだと思う。頭の中で、AだとするとB、BだとすればC、B にDを加えるとE、というように試行錯誤しながら想いを積み上げていく感じである。 世の中のビジョナリーなどといわれるリーダーなどは、インスピレーションを受けて、そ の完成した造形物がすぐに「見える」こともあるかもしれないが、基本的には、意識的、 無意識的に頭の中でそういった積み上げをやっているのである。 出発的は、個人の思いや信念や夢である。もちろんその内容も、それが形成される過程も 人それぞれである。走りながら見つける人もいるし、若いころからこうありたい、こうな りたいというイメージを持っている人もいるだろう。そうした思いや夢を引き戻して考え、 想いを積み上げていきビジョンになるのである。現在の私の個人的な夢は、日本に Web イ ノベーションを起こすことである。 実際それは大仕事なので、 現実に引き寄せて考えると、 Tomonori Murakami confidential - 14 - 2008/05/02 自分でなんらかのサービスを立ち上げるとともに、こうした本を執筆しながら私の考え方 を広め、起業家や経営者や現場の方に対するコンサルティングやインキュベーションを行 い、更にはWebイノベーションの動きを伝えるメディアを立ち上げる、という漠然とし た構想である。かなり今後も構想を積み上げる試行錯誤は必要であろうが、夢や思いをベ ースになにをしたらよいか、なにができそうか、を自分に引き寄せて考えた結果である。 結果は誰にも分からないが、トライしてみる価値はあるであろう。 Tomonori Murakami confidential - 15 - 2008/05/02 Web イノベーションとうまく付き合う このように独自のビジョンを持ってそれを実現していくことは、多くのスタートアップ企 業やネット専業の企業にとっては、企業戦略そのものであるが、一方、本業が別にあり新 規事業としてWebを想定していない企業や、Web でビジネスを行いながらもポータルサ イトなどの既存モデルで成功してきた企業にとっては、更に上位の視点から考える必要が ある。 別の言葉でいえば、そうした企業にとっては、Webイノベーションの世界とどう付き合 っていくかについて、過去の歴史や資産、本業などを考え合わせながら、尐し踏みとどま って、考えていかなければならないのである。 例えば、 本業が Web と別にある企業は、 いかにこの Web イノベーションを自社のサービス に取り入れていくか、新たなマーケティングの機会としてどう利用していくか。また、雑 誌などの既存メディアも含めて広告コンテンツベースの企業は、現状の Web イノベーショ ンの動きによって、売上げの急激な減尐やユーザー数の減尐、といった問題に直面してい る企業やサービスにとっては、そういった問題をどう乗り越えていくか、といった課題で ある。 現状では、日本においてはまだ本格的には、Web イノベーションが本格的には、始まって いないため、 直接的な影響を受けていなく、 痛みが分からない企業もあるかもしれないが、 私自身のコンサルティング案件においては大きなテーマの一つである。 本業が Web と別にある企業は、 本業自体が Web イノベーションを取り入れる制限になって いる場合も多いが、新規事業の柱にするなどと多くを望まなければ、部分的に相性のよい サービスや機能をうまく見繕って取り入ればよいので、尐なくとも危機的な状況ではない であろう。 例えば、自らソーシャルサイトをやらなくても Mixi などにコミュニティを立ち上げそこで のキャンペーン活動をしたり、Youtube などのビデオ共有サイトにバイラルビデオをアッ プしたり、成功しているメディアをうまく活用してマーケティングを行うといった例であ る。この分野に関しては、書籍も山のように出ているので、詳しくは書かないが、とにか く企業や製品の販売促進や顧客の保持のためにソーシャルサイトや様々なマーケティング ツールをうまく利用することができる。つまり新たなマーケティングのチャンスが広がっ ているのである。 Tomonori Murakami confidential - 16 - 2008/05/02 一方、飲食、不動産、ライフスタイル、旅行などの広告コンテンツベースの専門情報提供 サイトや雑誌などにとっては Web イノベーションがある意味脅威として写っているだろう。 広告コンテンツベースの専門情報提供サイトというのは、ユーザーのトラフィックや購入 を基礎とするメディア力を求めて、広告主がメディアに広告を出稿し、その出稿された広 告コンテンツ自体がユーザーや読者にとっては、価値を持ち、充実した情報品揃えに見え る、という構造になっており、その広告を集めるためのコアな力が、広告主とのコネクシ ョンや営業力である。 一方、Web イノベーションの世界では、まさにグーグルのように、強力なメディア力を背 景に、自動的に広告主を大量に集める仕組みにしていたり、グーグルニュースや一般的な バーティカル検索のように、自動的に Web をクロールしてコンテンツを収集・表示するな ど、コアな部分は人的な営業の力ではなく、システムである。もちろん、Web2.0 の特徴で ある、供給する情報自体をユーザーが自動的に作り出すというソーシャルサイトのような 存在も数多く台頭してきている。 つまり、営業力の強さを武器に広告コンテンツを集める企業は、メディア力を人的なパワ ーではなく自動的に作り出す巨大な機械のような相手と素手で戦うようなものである。 このような広告主やコンテンツを自動的に集めてくるシステムは、残念なから、従来から の広告コンテンツベースのシステムとは相容れない。1つには広告主との利害関係の違い がある。簡単にいうと、従来からの広告コンテンツベースのメディアにおいては、お金を くれる広告主をユーザーに自由に評価させるわけに行かないのである。 通常、メディアは広告主を評価できない。なぜなら売上げの源泉である広告主の機嫌を損 ねたくないからである。グーグルのように強いメディアであれば、問題ないが通常は、競 合メディアが数多く存在しているので、簡単に移行してしまうからである。別の言葉でい うと、広告主に対して交渉力が弱いということである。広告主に対して強い交渉力を持つ ことができるのであればよいが、そうではないメディアが広告主に立てつくことは難しい。 要するに広告コンテンツベースの専門情報提供サイトは、ビジネスモデル自体が危機に瀕 しているということである。しかも既存のビジネスデルに新しいビジネスモデルを取り入 れることができない。新しいビジネスモデルは、既存の資産を利用できないし、売上げの 規模も期待できない。そんな中、広告売上げは減尐し、ユーザーも奪われ続けているとい った状況にある。まさに万事休す、である。さてどうするか。 Tomonori Murakami confidential - 17 - 2008/05/02 1つは、目標を下げてしまうという案があるだろう。売上げの成長は期待できないが、こ れまでの強みである専門情報を生かして、ユーザーが作り出せない価値のある情報を生か して、最悪の状態にならないように維持するという方法である。いくら Web2.0 が実現でき ない価値を作り出すことで規模が縮小しても生き残るというのも悪くないであろう。 もう一つは、既存のビジネスモデルは生かしたまま、将来への足がかりとして Web イノベ ーションを取り入れてみるということである。外部パートナーと強力しながら、実現する 方法である。リソースや発想、能力などでギャップは存在するであろうが、将来を見越し て、経験として取り入れることが考えられるであろう。 もう一つは、両足を鍋につっこんでしまう方法である。文化や根本的な発想を変えて自ら を作り変える。もしくは、それが難しければ、別会社を作ってグリーンフィールドで出発 するというやり方であるもあるだろう。 これら3つの選択肢は、規模、売上げ、文化、人材、資産、意思、他の事業との関係とい った視点で評価する必要があり、それらによって答えが違ってくるであろう。 Webにおける収益モデルと Web2.0 Web イノベーションを戦略に取り入れる際に気になるのが収益である。企業内で上司を説 得する際にも常に問題となる点である。 「儲からないじゃないか」 というわけである。 実際、 儲けるのは非常に難しいことは否定できない。面白そうだからやってみたくとも、それが 理由で実施できない人も数多くいるだろう。ここでは、Webにおいてはなぜ収益を上げ ることが難しいのか、実際、チャンスはないのかという点について考えてみたい。 りんご農家ばかりの村があったとして、すべて周りの農家がタダでりんごを配っている時 に、ある農家だけが200円でりんごを売ることができるだろうか。常識で考えてやはり それは難しいだろう。では、りんごに自分で絵を描いて売ったらどうだろう。りんごアー トである。はじめは面白いということで、100円くらいで売れるかもしれないが、その うち同じような絵を無料で配るものが出てきたら、無料にせざるを得なくなるだろう。も ちろん特別な才能があれば別である。 一方、自分の村では200円でりんごが売られているが、ある村ではりんごがただで配ら れていると、うわさで聞いた場合はどうだろうか。うわさの村が1週間くらいかけないと いけないようなところにあれば、安心である。これまで通り200円で売れる。しかし、 歩いて3分のすぐ隣の村であればどうだろう。労力がかかないのであれば、無料のりんご Tomonori Murakami confidential - 18 - 2008/05/02 を求めて隣村へ行くだろう。 つまり、基本的には、どこかで同じ価値のものが無料で提供されているのであれば、それ にしたがって自らも無料にせざるを得ない。なにか価格をつけるだけの価値を追加するこ とができればよいが、その価値の実現ハードルがそれほど高くなく、情報格差のない世界 では、その価値にもし値段をつけることができたとしても、同じ価値の同様のサービスが 出てくるので、早晩価格が下がり購入者は安いほうに流れていくだろう。 また、どこかの村で無料で提供されていたとしても、提供を受けたい人がそこにアクセス しにくければ、値段をつけることができるが、もしアクセスが容易になれば、そちらに流 れていくだろう。 かなり極端に書いているが、インターネットは、基本的には、価値の実現ハードルがそれ ほど高いため結果競争が激しく、かつ情報格差のない世界であるから、必然的に無料へと 流れていくのである。特に一般的な、ユーザー生成のコンテンツであれば、マネがしやす く、しかもコンテンツをユーザーが作ってくれるためもともとのコストが低いために、な おさら値段をつけるのが難しい。このように、もともとインターネットは、収益をあげる ことが難しい世界なのである。 しかし、そういった環境にいながらも、実際に収益をあげている企業はもちろん存在して いる。それは、価値の実現ハードルが高い、つまりマネされにくいサービスを提供してい るためである。ここで、現在存在している収益モデルを具体的に見てみよう。 ○広告枞を売る 企業などが、広告スペースの価値にお金を払う。あらゆるユーザーインターフェースでの 表示が考えられるになる。例としては、リスティング広告(AdWords) 、コンテンツ連動広 告(AdSense) 、ディスプレイ広告、コンテンツ広告(リクナビ NEXT、craigslist) 、コミ ュニティ連動型企画、広告(Mixi、オールアバウト) 、ビデオ広告、ウィジェット広告、メ ール広告、RSS 広告、アフィリエイト広告 ○取引の場を売る 個人やショップなどの取引の主体者が、 取引の場としての価値にお金を払う。 具体的には、 市場参加料、取引手数料が収益となる。いってみれば露店のショバ代である。例としては、 オークション(ヤフオク、モバオク) 、オンライントレード(E*TRADE) 、ショッピングモ ール(楽天) Tomonori Murakami confidential - 19 - 2008/05/02 ○リアルの商品を売る 個人が Web を介したリアルの商品購入にお金を払う。例としては、本の販売(アマゾン) ○遊び場と遊び道具を売る 個人や開発者などが遊び場としての価値にお金を払う。具体的には、遊び場への入場料や 道具利用料が収益となる。テーマパークのようなもの。例としては、バーチャルワールド (Second Life) ○情報コンテンツやサービスを売る 個人が情報コンテンツやサービスを所有・利用できる価値に金を払う。例としては、音楽 コンテンツ(iTune Music Store) 、プレミアムサービス(ヤフープレミアム、Mixi プレミ アム) 、調査レポート(Web 2.0 Principles and BestPractices) ○ストレージスペースを売る サービス提供者、開発者や個人がストレージスペースが利用できる価値。容量代とデータ 転送代等。貸し倉庫のようなもの。例としては、S3(アマゾン) ○アプリケーションを売る サービス提供者などがアプリケーションを利用・提供できる価値に金を払う。パッケージ やASPによる提供。例としては、ブログソフトウエア() このように、収益モデルの基礎となる、マネされにくさは、現状では、ユーザーの利用に よって実現されている場合がほとんどである。つまり、ユーザーが利用すればするほど、 マネしにくい世界になっていく。広告モデルであれば、強力な広告のプラットフォームと なり、そこに値段がつくのである。 成功したサービスにおける、 ユーザー数の増加が、 指数関数的に伸びていくことは、 Second Life の人口増加、ミクシイの利用者の増加などどんな指標を見てもはっきりと現れている が、利用者や参加者が増えれば、増えるほど価値を増していき、マネされにくい世界にな っていくというというネットワーク効果が現れている。 5月にアメリカの SNS の Facebook が Platform というサービスを立ち上げたが、第 3 者 の企業が、Facebook でアプリケーションを提供できるというものである。これは 2000 万 のユーザーを抱える広告プラットフォームに、各企業が参加しているということである。 当然、各アプリケーション提供企業は、利用されブランド名を知ってほしい。またそれだ けではなく、そこから生まれる広告などのレベニューを得ることができれば、更によい。 Tomonori Murakami confidential - 20 - 2008/05/02 その根本的な価値は、ユーザーの利用にある。数多くのアクティブなユーザーが存在して いるということが広告プラットフォームとしての価値そのものなのである。API を公開し て、ユーザーとの接点を持つサービスに利用してもらうとは、逆の発想で、自らがユーザ ーを持っているので、そこにアプリケーションを呼び込もうとしているのである。 一般的な、Web2.0 型のサービスであれば、まずは、ユーザー数を増やす作戦を考える。ユ ーザーを集めコンテンツを作ってもらうことがトリガーとなり、そこにどう広告を載せる か、もしくは、買収されるかについて気を回せばよいということになる。基本的には収益 は後からついてくるといわれているが、実際、ユーザーに支持されているのであれば、そ れは正しい、ということになるのである。 もちろん収益だけでなく、前述したように、先行する企業による買収や投資という出口も 存在している。スタートアップ企業も非常に高いプレミアムがついて買収されているが、 Web関連の企業における企業価値というのは、通常のキャッシュフローから計算される 価値だけでなく、マネできない部分であるそのようなユーザーの支持を得ているユーザー 価値やサービスを生み出し続ける社員の価値といったところも評価されているのである。 Tomonori Murakami confidential - 21 - 2008/05/02 ●Web イノベーター集団を作る Web イノベーションを起こし続ける組織はどうあるべきなのかについて考えてみたい。今 回「エクセレント・カンパニー」という80年代にベストセラーとなった本を読み返した が、20数年たっても色あせない内容、普遍性に驚いた。もちろん外的な環境は20数年 で変わってはいるし、 ましてやWebの世界はリアルの世界と大きく違っている。 しかし、 多くの観察やインタビューから発見された、顧客を第一に考える、実験精神と失敗を許容 する文化を持つ、第一に価値観を保持・管理する、などエクセレントであるための組織や 経営の本質的な条件は時間がたっても変わらない。逆に、Webという環境が、その本質 を更に明確に炙り出している。 しかし、実際は20数年たってみても、エクセレントな会社はそう多くは見つからない。 顧客の声は聞かないで、組織の都合に顧客を合わせる、失敗を許容しないで減点主義によ る評価を行う、価値観を管理するよりも数字を管理する、など、世の中ではいまだにエク セレントではないやり方がはびこっている。比較的新しい世界である Web 業界においても 同じ状況であるように見える。 Web イノベーションを起こし続けることを目指す組織は、 一人一人の Web イノベーターが 集まった集団である。求心力を保ちながらその一人一人をどう生かし、どう全体としての パワーを生み出していくのかということが重要なテーマである。3つの観点から説明しよ う。 多様な人の知的インタラクション まずは、多様な知的インタラクションである。これまで、イノベーションのための土壌と して考え方などの個人のマインドがどうあるべきかについて書いたが、そうした個人間の 知のインタラクションをいかに促すことである。もちろん意識的にもある程度はできるで あろうが、そういったインタラクションが自然に発生するような環境を作ることが重要で ある。 そのためにはよく言われるように、前提として、多種多様なバックグランドや専門性を持 った知的な人材と一緒にやること、採用することがまず必要である。こうした人材同士に おるダイナミックなインタラクションからイノベーションがおきてくる。逆にメーカーな どのようにいかに優秀であっても同質で同じような経験しかつんできていな人を大量に集 めたとしても、現在の思考の枞を飛び出すこと、つまりイノベーションを起こすことは難 しい。 Tomonori Murakami confidential - 22 - 2008/05/02 また、極論ではあるが、イノベーションという観点で見ると、若ければ若いほどよい。一 般的には、年齢を重ね、経験を重ねれば重ねるほど、思い込みや過去の体験に縛られ、別 の会社で身につけた文化付きでやってくる。そしてそれによって議論のベースが合わずに、 建設的な知的なインタラクションの邪魔な場合が多いのだ。またそのように多様な人材を 採用するとともに、パーティションで一人一人を分断するのではなく、気軽に声を掛け合 えるようにオフィスの空間を工夫したり、自由に使える時間を持てるようにしたり、勉強 会を開いたり、外部から講師を呼んでセミナーをやってみたり、知的な刺激を活発に与え 合えるような環境作りも重要である。 オープンマインドとオープンネットワーク 次に知的インタラクションの前提ともなるオープンマインドである。専門性や文化の違い によるクローズマインドとは間逆の考え方を、個人として、組織として、どう持ち続ける か。これはなかなか難しい。それは、専門が違っていたとしても、相手の立場や考え方を 理解して協調するというスタンスが必要である。実際、こうした組織の課題は大企業で起 こりがちだと思われるが、最小のチームにおいても起こりうる。生まれたばかりのスター トアップ企業にも起こりうる。特に文化や専門性の違う人が集まるWebの世界では、大 企業における部門間のセクショナリズムの問題が、個人対個人のレベルでおきる。 実際、自分の経験した例でも痛感した。あるクライアントに対するサービスにおいて、デ ザイナーとエンジニアと私という3人という小さなチームでのプロジェクトであったが、 個性的なデザイナーとエンジニアが、それぞれの専門性や文化に固執し、その進め方や考 え方を主張し合い、相手の話を聞かず「それはあっちの仕事だ」とお互いに相手に仕事を 押し付け、その結果、作業の隙間が広くなってしまったのだ。なんとかプロジェクトは終 わらせたものの、その隙間を埋めることに身も心もヘトヘトになった。 手を挙げたメンバーが参加してもらう、問題が起きたらメンバーを交代できる、というこ とが可能であれば、 特に問題にならなかったのかもしれない。 多尐の文化の違いや衝突も、 メンバーに問題解決のスキルや考え方の土壌があれば、解決できたのかもしれない。しか し、小さな企業においてはそのような自由度や余裕がなかったため、そうした環境の中プ ロジェクトを進めなければならない。したがって、そういうことがおきないような仕組み を取り入れることでしか、維持されない。 一般的にはこうした問題を解決するためには、2つの方法がある。1つは仕事のプロセス Tomonori Murakami confidential - 23 - 2008/05/02 やタスクの標準化を極端まで突き詰めることである。これには足して100となるような 初期の設計が重要であるが、その分柔軟性がない。特に日本人の文化にはまったくなじま ない。 このように職務分掌というようにタスクを与えるのではなく、やや曖昧でもいいので、ミ ッションを定めるべきである。やるべきことを上が考えて、それを落としていくのは軍隊 や官僚組織の典型である。しかし与えられたことをきちんとこなすことを評価されるとそ れ以外のことはやらなくなる。役割意識を狭く捉えだすのである。 もちろん会社全体のミッションと相反しない内容であるのはもちろんであるが、本人がや りたいことを前提にミッションを定めると、やはりやりたいことなので、最高のパワーと 成果が出しやすい。そして、言われる前に期待を超えることを率先して成果を上げた人を 評価していくというような仕組みをつくることによってそれをサポートするのである。そ うすると、自然と仕事の範囲を超えていくようになる。 それとともに、 やはりピアプレッシャーが働くように、 問題解決をする第三者を割りあて、 その問題解決をした人を評価する仕組みを取り入れるといった第三者を介した仕組みとい うのも考えられるかもしれない。 もう一つ、オープンマインドには外部へ向かうものもある。これも知的インタラクション と深く関連しているが、社内でオープンマインドを持っているだけでなく、外部に対して もオープンになり、うまく外部の知恵や能力を利用していくことである。個人や小さな会 社であれば当然のごとく外部のネットワークを利用しあわなければ生きていけない。それ は、仕事やリソースの流通の意味ももちろんあるが、外部とのインタラクションによって 知的な刺激を得られるというメリットもある。これは積極的に利用すべきである。 オープンソースの活用も知的な刺激を受けるという意味でその1つである。もちろん刺激 という面を超えて、そこから得られる知見を実際に業務に取り入れるという発想である。 具体的には、社員がオープンソースのプロジェクトに積極的に参加して、そのコンポーネ ントを自社のサービスに取り入れるといった活用の仕方である。 実際、 グーグルは、 Linux kernel と MySQL でのオープンソースのプロジェクトに力を置いて実施している。 これは、 もちろんオープンソースコミュニティへの貢献といった側面もあるが、賢く利用している ように思う。 イノベーションは、数多くの試してみる中、遊んでみる中から生まれてくる。試行錯誤な ので、もちろん失敗することも数多いであろう。イノベーション関連の本を読むと必ず出 Tomonori Murakami confidential - 24 - 2008/05/02 てくるが、まずはそうした失敗を許容することができる文化を持っていることが重要であ る。 自転車操業をしている企業で従業員に”遊び”の時間を与えることは難しいであろうが、 そのような失敗がゆるされる自由な時間から常識はずれのイノベーティブななにかが出て くる。既に書いたオープンソースのプロジェクトも自由に参加しているわけであるから失 敗のリスクがない。失敗は星の数ほどあるであろうが、そうした自由な状況の中から次々 にイノベーションがおきてくるのである。 価値観と行動規範 多様な知的インタラクションの実現、オープンマインド、オープンネットワークの実現の 前提条件としては、知的でオープンな人材が十分に活躍するための場を提供するといった 発想がある。これは、一般的な企業における発想の通り、企業や企業の収益目標のために 従業員が存在しているという考え方とは間逆である。 企業や企業の収益目標、そして自らに課せられた数値目標を超えていくことに、生きがい を感じて働く人は数多いであろうが、そのうち働く意味が分からなくなってしまうはずで ある。それと比較して、自分が使命感をもち、モチベーション高くする仕事では、どちら がよい結果を生み出すであろうか。 日本は、米国ほど流動性が高くないため、ある程度のことであれば我慢をしながら働くで あろうが、当事者意識を持ってチャレンジしていく志が小さくなっていくなど、精神的な 部分に与える影響はかなり大きいであろう。したがってやはり、企業のために従業員がい るのではなく、働く個人のために企業が存在している、そして、そうした前提に乗り、管 理ではなく、使命を与え、動機付けるというというスタンスが重要であるのである。 ただし、それだけでは不十分である。企業として継続的に価値を創出し続けるためには、 その基盤として、企業として共通の価値観と行動規範が必要になる。ユーザーに提供する 価値がなにか、そのためにどう行動しなければならないか、という点についての共通認識 なしに、継続的にユーザーに価値を提供できるとは思えない。 価値観の中身については、例えば、これまで説明してきたように、ユーザーの期待値を超 える新しさ、ユーザーの体験、変化を提供し続けることになるだろう。行動規範としても、 これまで挙げたようなオープンマインドであるとか、チームの問題解決に寄与するとか、 知的付加価値を出し続けるといった内容になるであろう。 Tomonori Murakami confidential - 25 - 2008/05/02 コンサルティングファームのマッキンゼーの中興の祖であるマービン・バウアーは、老齢 になっても、世界中のオフィスをまわりマッキンゼーの価値観と行動規範を説き続けたと いう。それほど、企業が価値を提供し続け、ブランドを維持し続けるために重要なことな のである。 Tomonori Murakami confidential - 26 - 2008/05/02 ●Web イノベーターになる ①まずは行動してみる 第一章で説明したような Web イノベーションの動きを目にするにつけ、実際、自分でもや ってみたい、もしくはやらなければならないと思っている人や企業も多いだろう。ここで は Web イノベーターの基本スタンスである"まず行動を起こす"ということについて考えて みたい。 ここで、イノベーションの意味を確認してみよう。語源辞典で Innovation という言葉を引 くと、 ”新しい”という意味を含み、関連後としては、新星を意味する nova や新しいもの やめずらしいものを意味する novelty が存在している。In という言葉が頭について、 ”新し さを導入する”という意味であるという。 ウィキペディアによると、イノベーションとは「新しい技術の発明だけではなく、新しい アイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発 的な人・組織・社会の幅広い変革である。つまり、それまでのモノ、仕組みなどに対して、 全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こ すことを指す」とある。 つまり、 Web イノベーターは、 「Web 上において新しい技術や考え方を取り入れて新たな価 値を生み出し、社会的にも大きな変化を起こす人または組織」といえる。 「死ぬことを悩んでいるくらいであれば死んだほうがましだ」という格言がある。悩んで いる状態というのは、自分で掘った穴に落ちてしまったようなものである。考えることと 悩むことは違う。なんらかの結論を出すことが次の行動につながる。悩んでいるとうのは 行動を起こせていない状態なのだ。 まずやってみるというスタンスが重要である。そのためには、やってみるという結論を出 す必要がある。やってみるか自体を悩んでいるほど無駄なことはない。まずやってみると いう結論を出してやってみるのだ。 当然であるが、これまで慣れ親しんだ技術や考え方を捨て、新しい技術や考え方を取り入 れることは、リスクが伴う。同じように、新しい価値を出すことも、他人から批判を受け たり、無視されたりするリスクが伴う。 Tomonori Murakami confidential - 27 - 2008/05/02 確かに、リスクがあることを始めるのは誰でも怖い。コツは小さく始めることである。大 きくジャンプして川の向こう側に渡るのは怖くても、水面から顔を出している石をたどっ ていけば、なんとか渡ることはできる。渡っているうちに以外と浅いことが分かるかもし れない。 幸いにして、Webの世界は、小さく始めやすい。尐し勉強すればサイトを持てるし、な んらかのサービスを始めることができる。様々な反忚を得ながら、楽しみながら大きくし ていくことができる。まずこれを大きなチャンスだと捉えるべきである。 Web イノベーターにとって一番基礎となるのは、このような前向きの考え方と行動パター ンである。新しいものに対する恐れに立ち向かう勇気である。新しいもに対する恐れから 逃げ出したり、目をそらしたりする態度からは、新たな価値を生み出すことは難しい。 よくあるのは、見えないもの、不確実なもの、異質なものに対して目隠しをしてしまう方 法である。なるべく見ないように、関わらないように、考えないようにする考え方である。 一番楽で安全で確実な方法である。誰もあえて、苦しくて、リスクがある方には行きたく ないと思うので、ごく自然な考え方かもしれない。 一方、不確実や未知を能動的に捉え、対処していくのも人間にとっては同じくごく自然な ことである。知らないことでも好奇心を持って知ることや、不確実だけどとりあえずやっ てみるといったことである。 例えば、食べたことのない果物の実を食べてみること。誰もいったことのない別の村に行 ってみること。暗くて不安であれば、いろいろなものを使って、試行錯誤をしながら火を おこしてみること。隣村の手が届かない美人女性に求婚すること。未知であったり不確実 であったりするが、様々な試行錯誤をやってみることで、なんらかのリターンを得るとい う考え方や行動パターンも人間のもともとの素質であるのではないか。 つまり、 全ての人に Web イノベーターとなるための素質が備わっているということであり、 望めば誰でも Web イノベーターになりうるということである。 後は、始めの一歩を踏み出すだけである。 Guy Kasawaki という人が自身のブログで Truemores というサイトを立ち上げた際にいか に安く、いかに早く立ち上げることができたかというストーリーを具体的な数字を示しな がら語っている。その内容は、ビジネスプランもかかない、VCへのピッチも行わない、 Tomonori Murakami confidential - 28 - 2008/05/02 $4,500 の開発費で開発、ロゴに$399・・・など、低コストと早いスピードで実際に立ち上 げている。 実際は、プロジェクトの規模や内容によるので、後で説明するように特にコンセプトを揉 む部分は十分行った方がよい。ただ、コンセプトができた後の作りの部分であれば、その 程度の予算と労力でリリースできてしまう世界なのである。 とにかくなにかを始めるのは、 小さいところから始めるのがよい。 「とりあえずやってみる」 である。学生のころに、試験の計画だけ綿密に立てて、実際はすぐにくずれてしまった経 験は誰もが持っているのではないだろうか。気合を入れて徹底的に準備をしても、長くは 続かないのがオチである。 逆に、なにかを始めたことを思い出してみると、たいていは小さく始めている。たまたま 試験の結果がよかったから勉強する気になったとか、近所を自転車で走れたので尐し遠出 をしてみた、などといった例である。 私自身も90年代半ばから Web の世界に入ったが、きっかけは自分でサイトを作ってみた ことである。当時興味のあった複雑系の科学と仏教とアートをテーマにしたサイトである。 内容はともかくそのサイトに興味を持ってくれたイギリス人やアメリカ人と友人になった ことが更にのめり込ませる要因となった。 このように小さく初めて、フィードバックを得ながらだんだんと大きくなっていくもので ある。望みさえすれば誰にでも Web イノベーターになりうる素質を持っており、後は始め の第一歩を踏み出すだけである。 会社の仲間で、検討プロジェクトを立ち上げる、小さなウィジェットを作ってみる、アイ ディアを友達と議論してみる、サービスの連携を絵に描いてみる、ブログで一緒にやる人 を募ってみる、アメリカのサービスをリストアップする、Web 関連のブログを読んでみ る・・第一歩はなんでもよいが、とにかく始めてみるのがよい。まず行動してみるのであ る。 Tomonori Murakami confidential - 29 - 2008/05/02 ②新しい価値を作る あなたであればどんな時にアイディアが思い浮かぶだろうか。道を歩いていて思いつくこ ともあれば、入浴中にひらめく場合もあるだろう。ブレストしながら出てくることもあれ ば、一人でじっくり考えていると湧く場合もあるだろう。なにかツールを使う場合もあれ ば、使わない場合もあるだろう。アイディアを出そうと思って出す場合と突然降ってくる 場合もあるだろう。 その瞬間、なにかがつながった感覚を得る。ぱっと目の前が開き、いてもたってもいられ なくなる・・アイディアが湧く瞬間というのはすばらしい体験であると思う。 一番シンプルな形は、すぐにその湧いたアイディアをすぐに形にして市場に問うことであ る。 実際、 Web の世界ではそれも可能である。 部分的な改修や小さいプログラムの開発を、 スピード優先で、どんどん市場に出していくのである。 しかし、新しいサービスを投入する場合は、1人で全てできることはまれである。パート ナーや仲間の協力を得ながら実現する必要がある。そうした場合には、コミュニケーショ ンを通して、アイディアの価値を理解してもらわなければいけない。協力が得られないか らだ。更に言えば、誰もが参加したい、誰もが協力したいプロジェクトでありたいだろう。 そうしたモチベーションの高い形での参加や協力を促すために、生のアイディアでは伝達 しにくい。伝達しやすいパッケージに入っている必要がある。そのパッケージがコンセプ トである。 実際、戦略コンセプト、商品コンセプト、アイディアコンセプトなど、コンセプトという 言葉はいろいろな形使われている。アイディアをパッケージしたものがコンセプトである が、問題はどのようにパッケージするかである。 世の中の事例を見ると、戦略の意図を一文で表したものが戦略コンセプトであり、商品の 意図を一文で表したものが、商品コンセプトであり、アイディアの意図を一文で表したも のが、アイディアコンセプトであろう。つまり、パッケージの外的な要件としては、アイ ディアを一文であらわしていることである。サービスコンセプトであれば、サービスのア イディアを一文で表したものということになる。 実にシンプルである。ただ実際アイディアを一言で表すというのは難しい。こうでこうで こうなるからすごいんだよ、口頭でいうところを1文であらわさなければいけないのであ Tomonori Murakami confidential - 30 - 2008/05/02 る。それが、分かりやすく魅力的な一文であれば、それだけ多くの人の関心や協力を得る ことができるし、ユーザーにも共感されやすい。 更に、新しくて、共感できて、具体的であれば更によい。聞いた誰もが直感的によいと思 えるものがよいコンセプトである。そうしたコンセプトであれば、共感し、一緒に行動を 起こしたいと思うような一文であるとよい。 下にいくつか例を挙げてみた。どのように発想されたのか、検討されたコンセプトがなに かは分からないが、サイトに書いてある内容から、拾っている。どれも一文にパッケージ 化されている。 --------------------------------------------------------------------Freebase --------------------------------------------------------------------Free + Database = Freebase It's about film, sports, politics, music, science and everything else all connected together. Our contributors are collecting data from all over the internet to build a massive, collaboratively-edited database of cross-linked data. It's a big job and we're just getting started. --------------------------------------------------------------------Joost --------------------------------------------------------------------The new way of watching TV All the things you love about TV, fused with all the fun and interactive power of the internet. --------------------------------------------------------------------Second Life --------------------------------------------------------------------Second Life is a 3-D virtual world entirely built and owned by its residents. --------------------------------------------------------------------Facebook --------------------------------------------------------------------Facebook is a social utility that connects you with the people around you. --------------------------------------------------------------------では、実際どのようにコンセプトを作っていったらよいのであろうか。3つの発想方法の Tomonori Murakami confidential - 31 - 2008/05/02 例を挙げたので参考にしてみてほしい。 ○観察や質問を通して本質の洞察をする ユーザーは本当が求めているのはなにか。ユーザーの立場に立った場合にどんな不満があ るか。本質的な欲求はなにか。などというようにユーザーがなにを求めているのか、深く 掘っていくのである。 とにかくなぜ、なぜとどこまでも突き詰める方法である。それによって一見しただけでは 分からないユーザーの根本の動機や欲求をつかむのだ。競合も気づいていない根本の動機 や欲求を掴むことができれば、それはそのままチャンスとなる。根本の動機や欲求が分か れば、ではこう満たそうと発想が湧くからである。 この方法は、意識的に物事を疑うことがキードライバーとなる。人間の思い込みというの は恐ろしい。目の前にあることはそのまま受け入れてしまうのである。 会社の教育プログラムの一貫で、 「Web イライラリスト」というプログラムをやったことが ある。 Web に関するイライラすることを短時間で 100 個以上出すというプログラムである。 「ブラウザが四角いこと」 「ブックマークの長さ」 「ほしいデータが見つからない」 「自動的 に音が出るページ」 「無料で正確なトラフィックデータが得られない」など実際は書ききれ ないが、数多くのイライラが出てきた。更に深堀することによってチャンスを発見できる かもしれない。ためしにトライしてみてほしい。 1つ具体的に考えてみると、例えば、なぜ検索結果は 1500 万件も出てこないといけないの だろうか。そしてなぜ 1500 万件もの中から選ばなければいけないのだろうか。理由は、検 索エンジンが検索キーワードだけの情報ではユーザーのほしい情報がなにか分からないか らではないだろうか。 人間であれば、質問されたら、の質問の意図を汲み取り一つの答えを言う。つまり、現在 のやり方だと意図をみ取れないからそれらしい答えをいくつも並べるという状態になって いるのではないか。 では人間が相手の意図を知るためにどうしているかというと、相手の立場やこれまでの話 のつながりなどのコンテクストを読んでいるからであると思う。 英語のドラマを見るときにも知っている単語が1語聞こえてきたとしてもどんなコンテク Tomonori Murakami confidential - 32 - 2008/05/02 ストで言っていると分からないと、意味がまったく分からない。単にアップルといっても 言葉の意味を知りたいのか、会社の情報を知りたいのか、りんごの写真を見つけたいのか は分からない。ビジネスの会話の中でアップルといえば会社のアップルであろう。つまり 人間の頭は関連づけて言葉を覚えており、常にコンテクストの中でしか意味を理解できな いのだと思う。 そう考えると、どうやってそのユーザーの変幻自在なコンテクストを捉えるか、という問 題になる。現在行われている試みとしては、検索の履歴のデータをためてそれを解析する という方法や自然文による検索が代表的なものである。前者は大量のデータを集めること が成功のカギであるから、グーグルに勝てるとは思えないし、自然文を入れさせるのも実 際は、マッチングが難しそうである。 自分の検索行動を考えてみると、友人・知人と話をしている時や新聞やテレビなどで動機 形成され、PC を立ち上げ、検索エンジンを開き、検索ワードを入れて調べる、ということ ももちろん行う。しかしそれよりも、Web を使っていて、ある情報からの連想で検索動機 が形成されることの方が多い。 まさにそこにユーザーのコンテクストを捉えるチャンスが隠れているのではないか。つま り Web でなにかの情報に触れ、連想し、検索するというコンテクストをうまくつかむこと が出来れば、ダイレクトにコンテクストに合った検索結果を提供できるのではないか。 例えば、マウスオーバー検索というのはどうであろうか。グーグルツールバーの自動翻訳 のような検索機能である。気になった単語にマウスオーバーすると、例えば、意味とか翻 訳とか企業情報とか動物とかの、連想の選択肢が出現する。そして1つを選択すると、一 番マッチするであろう結果ページを大きく表示し、それ以外の選択肢をリストとして右に 表示するといったものである。 このサービス自体は、既に存在するかもしれないし、ベストなアイディアかどうかも分か らない、技術的な可能性も不明だ。しかし、このように、素朴な疑問に対して、なぜなぜ と問うことによって本質を洞察し、そこからアイディアを出していくという考え方自体は 利用できるだろう。 ○既存要素の新たな組み合わせを考える これは一番オーソドックスな方法であろう。既に存在するアイディア、機能、技術、コン セプト、対象ユーザーを縦横無尽に、組み合わせて新しいコンセプトを作るのだ。 Tomonori Murakami confidential - 33 - 2008/05/02 ポストイットを使った KJ 法やマインドマップが有名であるが、 アイディアや技術やコンセ プトを一覧性のある形式に並べ、その全体を見ながら、頭の中でいろいろな組み合わせを 試してみるという方法である。通常は、頭の中だけで、連想の力で要素を組み合わせてい くと思うが、キーワードを目に見える形にすることで、常に連想の力が働きやすくするの だ。 ランダムなキーワードを強制的に組み合わせる方法もあるかもしれない。例えば、マイン ドマップで強制的に枝を描くとか、マンダラートを作るという方法である。ただ、基本的 には、いかにキーワードを結びつけるかがポイントなので、結びつけの部分は頭脳の働き に頼った方がよいだろう。 注意しなければいけないのは、表面的な要素ではなく、それを支える考え方や本質をあぶ り出しておくことである。 そうでないと結びつけ自体が働かない。 本質を知るというのは、 その言葉の持つ意味や機能を具体的にイメージしておくことである。 既存要素を新たに組み合わせてコンセプトを考える例を挙げてみよう。 (既に存在している サービスもあるし、実現性は考慮していない) ・Wii+Second Life。Wii のようなリモコンで Second Life の中での操作ができる。入力イ ンターフェースがマウスやキーボードではなく、リモコンである。もちろんモーションキ ャプチャーのように手や足の動きと連動する。 ・X+2.0。 なにかに 2.0 というコンセプトワードをつけることによって新しいコンセプトと なる例。アイデンティティー2.0、エンタープライズ 2.0、モバイル 2.0 など、とにかく 2.0 をつけることによってコンセプト化をする。 ・ネット会議の WebEx のサービス+Second Life。バーチャルワールド内での企業向けカ ンファレンスのサービスを提供する ・グーグルアース+セカンドライフ。グーグルアース上においてバーチャルワールドのレ イヤーを乗せる。セカンドライフとも行き来ができるようにしたらもっと面白い。通常の プロダクトプレースメント系の広告はもちろんのことリアルでのあらゆる経済活動を模し たものが実現。 ・モバイル+GPS+広告オークションシステム。これらを組み合わせて、看板やイベント Tomonori Murakami confidential - 34 - 2008/05/02 などのリアルスペースにおけるパーソナライズされた広告出稿のオークションサービスを 実現する ・IC タグ+WiFi。店舗の値札に IC タグを使用し、その値札を WiFi が自動でキャッチ。エ リア別のチラシを自動生成、さらに携帯に自動配信する ・YouTube+JotSpot。ユーザーによる体系だてたビデオコンテンツの分類。 ○既存のアイディアやコンセプトを転用する 別のサービス、別の業界、別の国など違うところでのアイディアや技術やコンセプトを見 つけて、それを現在考えている分野に転用する方法である。 別の国のアイディアや技術やコンセプトを持ってくるのは日本人が得意なところであるこ とは自明であろう。SNS がアメリカで流行っているからということで、日本に持ち込み、 日本人向けにサービスを変え、提供するというのは一番ポピュラーな方法であろう。 これは、言語的な壁が高いため情報が伝播しにくい点や日本的な文化や日本人の経験値が 違うことによって、日本人にとっての価値を生み出すということであろう。 もちろん日本は文化的に特殊な部分があると思うが、Web に働く力の本質は変わらないの で、海外で成功したアイディアやコンセプトの本質をつかみ、日本の文化に合わせて作り 直し、タイミングを見て展開することがこの方法のあり方である。 特に、 既存要素の新たな組み合わせを考える、 既存のアイディアやコンセプトを転用する、 という2つの考え方にには、組み合わせ、転用という言葉にも表れているように、別々の 要素を結びつけるという頭の働きが根本にある。 別々の要素を結びつけるというのは、お見合いのセッティングをするようなもので、それ ぞれのことをよく知った上で、かつ組み合わせるとうまくいきそうだという感覚がないと いけない。実際は、確実にうまくいくかは分からないが、うまく行く例を見てきているこ とが、組み合わせの価値の可能性を高めるために必要である。2人のよく知らない人をつ れてきて、単に引き合わせてもなにも起きないだろう。 つまり、2人の人柄や価値観をよく知っていること、これまでの経験値から2人を組み合 Tomonori Murakami confidential - 35 - 2008/05/02 わせたらうまくいきそうだという感覚を持っていること、この2つの要件があって、初め てお見合いがうまくいくのだと思う。これは、すなわち、各要素の本質を理解しているこ と、組み合わせた場合の成功パターンを知っていることが必要である。 パターン (pattern) という言葉を語源辞典で見てみると、 手本、 型という意味で、 patron(= 守護聖人) = まねすべき模範が語源になっており、parent=親や papa=父、なども派生し てくる言葉であるとのこと。つまり、パターンの言葉の意味として、まねをすべき思考や 行動の手本や型自体が、含まれているということである。 では、コンセプトを考える際における真似をすべきパターンとは具体的にどういうことで あろうか。 単にコンセプトとして使われている言葉自体を覚えておいても意味がない。手本や型がど んな状況や背景と結びつくのか、その結果どうだったのか、ということをセットとして、 パターンとして頭に入れておくことである。それによって現在直面している課題に合致す るのか、他の手本や型との相性はどうか、ということが分かり、実際に使えるパターンと なる。パターン=「状況や背景」+「手本や型」+「結果」 例えば「この人はこんな状況でこういう考え方や行動をしたらこうなった」 「このサービス はこのような状況でこんな価値を提供したらこうなった」というパターンである。具体的 に Web のサービスにおいて成功した人や信頼できる人の言葉や事例を数多く知っておくと よいだろう。 実際は、断片的にしか事例や言葉はないので、単純に知るというだけでなく、その断片か らなぜそうなったのかという背景をロジックで導き出すことと、その手本や型のポイント を知ること、その結果を知ること、を通して自分の血肉にするということが重要な点であ る。 ○人間の欲求から考える もう一つは、人間の欲求から考えるという手法がある。Web は能動的メディアであり行動 メディアである。自分の動機と目的に基づいて形で行動する。その自分の動機はどこから 生まれるであろうか。もちろん義務感で行動を起こさなければいけないこともあろう。子 供が生まれるから家を探さなければいけない、など。また恐怖感や心配から動機が生まれ るかもれない。単純に利便性を求めているのかもしれない。そうした動機が生まれる要因 の中で一番ポジティブで強いものが「欲求」である。なにかをしたい、という思いがメデ Tomonori Murakami confidential - 36 - 2008/05/02 ィアによって拡張されるのである。 そうした人間の心理に潜む「欲求」をベースに新しい価値が生み出せないかを検討するの である。心理学で使われる欲求のフレームワークは数多くあるので、そこから自分なりに 使えそうなものを利用してみよう。もちろん自分で発見してもよい。以下はWebサイト で見つけたものを加工・追加したものである。 ・新しい友人・知人、仲間を作りたい欲求 ・友人・知人、仲間とコミュニケーションしたい欲求 ・他の人と違っていたくないという欲求 ・他人に認められたいという欲求 ・最先端でいる/話題や流行に乗っていたい欲求 ・社会に貢献したい欲求 ・新しい友人・知人、仲間を作る欲求 ・教えたい/見せたい欲求 ・人からなにかを知る/教えてもらう欲求 ・他の人と共通の体験を持つ欲求 ・なにかを育てる欲求 ・有名になる/尊敬される欲求 ・他人と競争して勝つ欲求 ・楽しさや面白さを求める欲求 ・アート性やセンスなどの感覚刺激を求める欲求 ・新しいことに触れていたい欲求 ・自分のことを知りたいと思う欲求 ・他人の性格や心理知りたいと思う欲求 ・自己顕示欲求 ・困っている人を助けたいという欲求 使い方としては、テーマを設定し、それぞれの欲求を元に考えられるサービスを数多くリ ストアップしていくのである。例えば、 「レシピ」であれば、 「レシピ」×「社会に貢献し たい欲求」で、世界中のレシピを集めたレシピデータベースを作るというアイディアがす ぐに湧く。それを FreeBase のようにカテゴライズし、小さな修正を可能にすうことで、ジ グソーパズルの穴を埋めていくような形で出来れば、多くが参加する可能性があるかもし れない。 「他人と競争して勝つ欲求」×「レシピ」であれば、Hot or Not のような形式で料理の写 Tomonori Murakami confidential - 37 - 2008/05/02 真を使ったコンテストを実施し、勝った分だけポイントがたまっていくようなサービスも 考えられる。 また、同じく「社会に貢献したい欲求」×「街」であれば、例えばみんなが携帯で写真を アップすることによってバーチャル渋谷を作るという構想を立て、自分のアップした写真 が3D空間の中に貼り付けられ、そのビルや土地を所有できたりしたら面白いかもしれな い。 これらの例はあくまで思いつきレベルであるが、このように欲求をベースにテーマと絡め て考えることによってアイディアが出やすくなるという側面がある。当然、自分や組織に は、昔から興味があってこだわっているものや既にサービスを提供していて資産となって いるテーマがあるだろうが、そういったテーマを元にユーザーの心理的な欲求を考えてい くという方法でもよい。 Tomonori Murakami confidential - 38 - 2008/05/02 ③ユーザーになりきる プロモーション(販売促進) 、キャンペーン、囲い込みという言葉はリアルのビジネスだけ でなく Web の世界でもよく使われている。通常このような言葉の裏に隠れているのは、企 業が群としての顧客なりユーザーなりをどう面として押さえるか、という発想である。い わば企業側から見た上からの押し付けの発想である。こうした発想に囚われると、ユーザ ーを捉えきれずに手からあふれていく。 単一の価値観の中で多くの人が同じ夢を見ていた高度成長時代であれば、投網漁法のよう に群を面で押さえることによって大量の収穫を得られたのかもしれない。しかし、既に何 年も前にそんな時代は終わっている。自由に海を泳ぎまわる多様な魚を投網漁法で捉える 時代は過ぎ去ったのだ。 当然であるが、ユーザーに価値を提供するということは、ユーザーに価値を感じてもらう ことが必要である。いくら価値を提供したとしてもユーザーがそれを感じ、期待するよう な行動を起こしてくれなければ始まらない。主役は「ユーザー」でり、 「企業」や「私」で はない。 これは大きなパラダイムチェンジである。自分が主役だと思っていた人が、他の人に主役 を譲るのは難しい。古い前提を元にした教科書や自分の成功体験に囚われているからであ る。前提の変化や本質に気づいて、発想や行動を変えられる人はあまりいない。 では、こうした囚われた状態から解放され、ユーザーを主役として捉えなおすためにはど うしたらよいのだろうか。 まずは自分が囚われていることを理解する必要がある。ただし、自分を客観的に見るのは 難しいので、他人に指摘してもらえばよい。例えば無意識のうちに「囲い込み」という言 葉を使っていないかをチェックしてもらうのである。 私自身、いろいろなクライアントにコンサルティングをしているが、多くのマーケティン グ担当者は、 いまだにユーザーを囲い込むためにどうすればよいのか、 という質問をする。 答えは、当然、そもそも囲い込もうとする発想自体がよくない。ユーザーに選び続けても らえるためになにをするか、という発想が必要である、ということである。 更にもっと実際的な方法としては、プロモーションやキャンペーンの効果をはっきりと見 てみるのがよい。私がこれまで多くのログ解析の結果を見たことがあるが、確かに効果が Tomonori Murakami confidential - 39 - 2008/05/02 あるが、大抵は一過性である。細い山が出来てその後は下にに戻っている。 認知の効果を説く人もいるが、プロモーションやキャンペーン後にトラフィックが上昇基 調になっているのは見たことがない。効果がまったくないとは言わないが、本質的な効果 があるようには見えない。 やはり、ユーザーへの"押し付け"ではなく、ユーザーとの"コミュニケーション"という発想 を持つべきである。人間同士のコミュニケーションを考えてみるとよくわかる。相手の求 めるものを知らずに、自分を一生懸命アピールしても相手にはまったく響かない。一方的 に押し付けたり、管理しても反発を招くだけである。例えば部下や同僚を動機付け、やる 気を持って動いてもらうために、命令することに効果があるだろうか。明らかに逆効果で ある。 イソップ童話の「北風と太陽」の寓話を思い出してみよう。趣旨としては、人は力まかせ に何かをさせられようとすると、かたくなになるが、自然にやりたくなるようにしむける と、拍子抜けするくらいすんなりいくという人間の心理をうまくついている話である。 これは読み替えると、提供者側の認知させたい、訪問させたい、利用させたいなどといっ た、一方的に押されるとユーザーはかたくなに拒否をし、逆に、ユーザーが自然と動くよ うな環境を整えることによって、自然と行動を起こしてくれるということであろう。 このように囚われた頭を解放するためには、ユーザーの立場に立って考える経験をつむこ とが一番である。最終的には、常にユーザーが自分の肩に乗っている、もしくは頭のどこ かに常に存在しているぐらいになるとよい。常にユーザーの視点で自分のコンセプトや設 計やデザインにチェックを入れるのである。 しかし、これはそれほど簡単ではない。一緒に住んでいる家族の立場に立つことも難しい のに、どうやってあったこともない他人の立場に立つことができるのか。 第一に、他人の立場に立つためには、他人のことをよく知らなければならない。具体的に どうやって知るか。あらゆる定量調査やその分析手法が編み出されているが、Web に関し ては、定量調査は二の次である。まずはユーザーの立場に立ってユーザー側から見ること から始めてみよう。ユーザーになりきるところから始めよう。 一番簡単なのは、自分が一番のユーザーになってしまうことである。具体的には、日々Web を使いまくるのである。 既に説明したように世の中は Web イノベーションがあふれている。 Tomonori Murakami confidential - 40 - 2008/05/02 そうした動きを何十もの blog をチェックし、そこで紹介されている新しいサービスは必ず 自分で使ってみる。そして、よいところ、悪いところを自分の頭のデータベースに蓄積し ていくのだ。 これは Web イノベーションに興味があれば既にやっていることだろう。ただ、自分と似て ない環境にいたりやニーズを持っているユーザーにどうなりきるか。規模的には比較にな らないほどこちらが多い。 まずできることは、自分の想像力を広げて、具体的にユーザーの動機や目的、期待値や行 動やシーンを考えてみることである。ユーザーの行動を具体的考えるためには、まずはシ ーンを分解することがコツである。場面を具体的にイメージしてみるのである。 例えば、雑誌購入のプロセスであれば、店に入る⇒生活情報誌のコーナーを見つける⇒表 紙を目にとめる⇒その雑誌を手にとる⇒中身を確認する⇒購入する⇒読む⇒保管する、と いうように行動を細かく分解すると、 具体的にイメージしやすい。 その場面の世界の中で、 まずは自分だったらどのように行動するかをイメージするのである。 これは自分の経験を元にした想像なので、やりやすいだろう。もちろん行ったことがない 場所やこれまで経験したことのない場面であれば、具体的にイメージすることは難しいか もしれない。しかしそれも同じである。これまで経験した近いと思われる場面からの連想 しながらイメージするのである。 火星を探索する場面を想像せよといわれたら、火星のイメージが記憶にない限り具体的に 想像するのは難しいであろう。しかし、昔みた映画のイメージから、なんとなく赤っぽい 土で乾燥した雰囲気の中、宇宙服をきながら石などを取るというイメージが持てる。実際 のところは分からないが、そのように現在持っている経験やイメージを元に具体的に場面 場面と行動をイメージするのである。 このようにまずは自分の想像力を使ってイメージするが、実際は、自分とユーザーは重な るところが尐ないかもしれない。その自分とユーザーのギャップを埋めていくためにでき ることが、観察やインタビューである。目的は、頭の中にはっきりとした輪郭をもったユ ーザーのイメージを持つということである。これは「ユーザーになりきる」ということで あるのだが、その輪郭をより明確にするために、観察やインタビューという手段が有効な のである。 観察は、Web上の行動であれば、ユーザーテストという手法がある。被験者にタスクを Tomonori Murakami confidential - 41 - 2008/05/02 与えて実際どんな行動をするのかを観察するのである。インタビューは、実際に現れる行 動自体ではなく、質問を通して、自らの中にユーザー自体の輪郭を作り上げていくのであ る。これらの手法は後ほど具体的に解説しよう。 他には、Web サービスの開発においてよく使われるツールとしてユーザーペルソナという ものがある。ユーザーペルソナとは、ユーザーの趣味趣向から生活スタイル、職業まで典 型的なユーザー像を記述したものである。 ユーザーペルソナを使うと、具体的にこういう人であればこういう行動をしそうだなとい うことが連想しやすい。具体的に属性が記述されるので、複数のメンバーが絡むプロジェ クトにおいては有効である。だれば見ても行動の発想・連想がしやすく、ユーザーのイメ ージがブレないからである。 このように、紹介したような方法を使って、正しく完全に「ユーザーになりきる」ことが できれば、半分は成功したようなものである。その上で考えなければいけないのは、どう ユーザーに価値を提供するかという問題である。 ④最高のユーザーエクスペリエンスを提供する ユーザーにとっての価値で一番重要なのはユーザーエクスペリエンスである。この言葉は Web の世界では昔から使われているが、Web イノベーターにとって忘れてはいけない重要 な概念である。 重要である理由は、Web におけるサービスやツールの品質と価値を決める最上位の概念だ からである。Web の価値を分解すると、設計や機能、デザイン、コンテンツなどとバラバ ラになるが、その最上位に存在するのがユーザーエクスペリエンスという概念なのだ。 これは、ビジョンと戦略、コンセプトとアイディア、のような関係性である。戦略やアイ ディアが、ビジョンやコンセプトに包まれていないと、バラバラのベクトルを向いて分散 してしまう。そうなると総体としての価値が下がってしまうのである。 これは、ユーザーの立場に立つとよく分かる。ユーザーはデザインのみ、構造のみ、コン テンツのみに価値を感じるのではなく、その総体として価値を感じているはずである。い わば個別の価値を横串して通り抜けるのである。 Tomonori Murakami confidential - 42 - 2008/05/02 そうすると、どこを切っても一定の高い価値を提供するためには、その一定の高い価値を 目指して Web をインテグレートする必要があるのである。その目指すべき最上位概念がユ ーザーエクスペリエンスなのである。 東京ミッドタウンを考えてみよう。東京ミッドタウンは、まず場が存在しており、その上 に店舗及び商品、宿泊施設とサービス、レストランとサービス等々自体の価値が乗ってい る。そしてそれらが設計・配置され、デザインされている。一方、ユーザーの立場に立っ て考えると、東ミッドタウンに行くのは、いろいろな目的があるだろうが、徒歩または交 通機関使って、そこまで出向いて、歩き回って、見て、滞在して、購入して、価値を感じ る。 つまり提供する価値を分解していくと、店舗やサービス、デザイン等の価値であるが、ユ ーザーから見た価値というのは、それらを体験する価値であるといえる。別の言葉で言え ば、ユーザーのコンテクストにあっていて、共感でき、感情をゆさぶるような体験である。 こうしたユーザーが感じる体験の価値をどうトータルに演出・デザインしていくか、とい う発想が最高のユーザーエクスペリエンスを目指す原点なのである。では、どんなエクス ペリエンス=体験を目指すべきなのだろうか。 ニールセンは「典型的なユーザーエクスペリエンスの第一要件は、つまらぬいらいらや面 倒なしに、顧客のニーズを正確に満たすことであり、次に所有する喜び、使用する喜びな る製品を生産するといった簡単、簡潔なことである」と定義している。 当然サービスの個性によって多種多様であるが、現代の戦いは、既に最低限のニーズを満 たす部分を越えて、どう使用する喜びを創造するかという面に移ってきている。当然それ は、激しい競争と絶え間ない改善によって全体のレベルがアップすることによって、第一 の要件が当然のこととして捉えられるようになってきたからである。 問題は、どうやってその使用する喜びを生み出すのかである。1つの方法として、ユーザ ーのコンテクストに沿って考える方法がある。ここで、マインド・コンテクストの考え方 とそのツールである「ケーキ」フレームワークを紹介しよう。 私は、ユーザーから見た意識と行為の流れをマインド・コンテクストと呼んでいる。なに かの行為をしているときに、そこからどんなフィードバックを得て、なにを思って、次に どんな行為をするか、というような意識と行為の流れである。 Tomonori Murakami confidential - 43 - 2008/05/02 例えば、新聞を読んでいるときに、コーヒーを飲みたくなって、お湯を沸かす、お湯を沸 かしながら、昨日会社であった楽しい出来事を思い出して、よい気分になる、そして、新 聞の記事に戻ると、ハッピーな記事があり、更に楽しくなる、といった意識と行為の流れ である。 Web サービスであれば、キレイな写真をとった、それを誰かに見せたいと思う、写真共有 サイトがあったなと思い出す、グーグルで調べる、いくつか出てくる、知っている名前を 見つける、クリックする、トップページを見る、きれいな写真がある、なんとなくわくわ くする、サイトの中をクリックして回る、内容を理解する、たくさんの人が写真をアップ している、自分もやってみようと思う、登録ボタンを押す、簡単そうだ、いつものパスワ ードを入れる、メールソフトを開く、文章を読んでクリックし登録を完了させる、自分の ページが見れる、いろいろなにができるか書いてある、写真アップボタンがある、クリッ クする、ページが開く、PC に落とした写真を選ぶ、選択してサブミットする、 、次の日に 検索エンジンでサイト名を打って訪問、コメントがついている、うれしい、返信をサブミ ット・・・ 意識と行為が混在しながら流れていく様子が分かったであろうか。これを一言でいうと体 験と呼んでいるのである。Web の場合、行為とはいっても、見る、読む、書く、聞く、ク リックする、ドラッグするというように現在は、目と手と耳を主な媒介とした行為ではあ る。そういった3感をいかに刺激して、心地よい、刺激的な、楽しいといった体験を演出 するかということになるだろう。 尐し広げて考えてみると、いわゆるパーソナライゼーションやレコメンデーションは、ま さに自動的に履歴を解析したり、ユーザー自身に操作させることによって、ユーザーのマ インド・コンテクストに合った機能やコンテンツ等を提供しようという試みと捉えること ができる。 例えば、自分の選んだ本と関連する本はどういった本があるのか、同分野で売れている本 はなにか、といったユーザーが気になるであろう選択肢を提供し、もしくは、自分で操作 させ、表示し、その経験を蓄積していく。その行動の蓄積がよりよいマインド・コンテク ストを演出していく、という発想である。 実際、自分の行動を考えてみると、かなり脈絡なく思いつきで行動していることもあり、 一回した行動にロジックがあるわけでもないので、過去の行動履歴から発想することは、 もしかしたら限界があるのかもしれない。それよりも提案型で、気づきを与えていくとい う発想の方がうまくいくであろう。 Tomonori Murakami confidential - 44 - 2008/05/02 他には、AdWords などのリスティング広告は、検索キーワードに関連した広告を出す、と いうものなので、マインド・コンテクストに合った情報が提供ができているといえるだろ う。 別の言葉でいえば、 検索キーワードは興味がある程度そのまま表現されたものなので、 非常にパワフルなコンテクストになりうるため、広告主にとっての効果が高い方法である といえる。 また、Adsense も、グーグルがページの内容を解析しているので、ページの内容に関連し た広告を出せる。したがって関連性がある。つまり、ユーザーのマインド・コンテクスト に合った広告を出せているといえる。 また、広告に行動ターゲティングという考え方があるが、それは、例えば、美容関連のペ ージをよく見ているユーザーに対して、別のページを見ている際にも美容関連の広告を出 したりするというように、どんなページを何度見たというユーザーの Web サイトにおける 行動を捉えて、それら合った広告を出すという考え方。 これまでのように、美容カテゴリーに美容系のバナー広告を出す、検索したキーワードに あわせた広告を出す、といったように、ページ単位、キーワード単位でユーザーの興味を 捉えるよりも、より効果的にユーザーの興味や関心を捉えることができると考えられてい る。つまり、より、集団的な、マインド・コンテクストに合わせた形での広告提供である といえるだろう。 更に広げて考えると、iPod+iTune は、リアルスペース、デスクトップスペースを横断した マインド・コンテクストの演出をすることによって、 新たな経験が生まれているといえる。 基本的には、サイト上のみならず、リアルスペース、デスクトップスペース、インターネ ットスペース、サイトスペースの全てが対象になるので、そこまでスコープを広げて考え る(4つのスペースを縦横無尽に行き来できるような演出)ことによって、更にダイナミ ックな体験を演出できるだろう。 次に、ユーザーのマインド・コンテクストを捉えるためのツールとして「ケーキ」フレー ムワークを紹介しよう。ユーザーのマインド・コンテクストを抽象化して考えると、以下 のようになる。 他人の行為や語る言葉、自分の体験や記憶、雑誌やテレビや手紙、Web サイトなどありと あらゆる対象から、 「気付」きを得て、なにかをしようとする「動機」が形成される。自分 Tomonori Murakami confidential - 45 - 2008/05/02 に合った仕事を見つけたい、渋谷のマンションを探したい、結婚関連の情報を知りたい、 Web2.0 の意味を知りたい・・明確性のレベルはグラデーションがあるが、そういった「動 機」を基点として、これまでの「体験」を元に「動機」を満たす方法やサービスを「想起」 したり、新たに「発見」したりする。 そうして「想起」したり「発見」したりした方法やサービスを、ある「期待」を持って「体 験」する。その「体験」が「期待」を超えることによって、 「記憶」や「記録」として残る ことによって、今後の「気づき」や「動機」や「想起」や「期待」に対してよいフィード バクを与えるとともに、他の人とその「記憶」 「記録」を「共有」したり、コミュニティに 「貢献」したりする行動をとる。 「気付」=(キ)ズ(キ) 「動機」=ドウ(キ) 「想起」=ソウ(キ) 「発見」=ハッ(ケ)ン 「期待」=(キ)タイ 「体験」=タイ(ケ)ン 「記憶」=(キ)オク 「記録」=(キ)ロク 「共有」=(キ)ョウユウ 「貢献」=コウ(ケ)ン 上記の重要なキーワードを並べてみると、全て(ケ)と(キ)が入っている。単純に並べて○○ ○○と4文字くらいで簡単に呼べるといいかもしれないが、そのようにするとキキキキケ キケキ、と絶対覚えられないものになってしまうので、短くして、これを、 「ケーキフレー ムワーク」と呼んでいる。 購買のフレームワークで、AIDMA(アイドマ) というものがある。Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)の頭文字を取 ったもので、アメリカのローランド・ホールが提唱した「消費行動」のプロセスに関する 仮説である。それに対して最近では、AISAS というフレームワークも出てきている。その 内容は、 Attention (注意) Interest → (関心) Search → (検索) Action → (行動) Share → (共有) 。実際の違いは、Desire の代わりに Search が入り、Memory が消え、Share が追 加されている。 もちろん AISAS でも多くの行動プロセスをカバーできるかもしれないが、実際は、サイト Tomonori Murakami confidential - 46 - 2008/05/02 の訪問は検索だけではない。また、情報の共有だけではない。記憶も重要な要素である。 マーケティング的な施策だけではなく、ユーザーの体験という視点でユーザーの立場から 考えると、ケーキフレームワークの方がよりよいフレームワークである。 そして、ユーザーの体験、ユーザーエクスペリエンスとは、狭義では、サービスの「体験」 の部分を指すが、ユーザーの視点から見ると、以上のようになにかの「気付」を得てから、 「共有」 「貢献」するまでのサイクル全体を示すと考えてよいだろう。 つまり、実際全てカバーしなくとも、尐なくとも視点だけは、意図的にケーキの全体をカ バーする、ケーキをホールで考えるということがユーザーのコンテクストを知るという意 味で、重要である。 具体的な検討視点としては、以下のようになるだろう。 「気付」=気付きを得る←どうやって気づきを与えるか 「動機」=動機を持つ、動機が高まる←どんな動機を持っているか、どうやって動機を高 めるか 「想起」=サイトのブランドを想起する←どのようにサービスのブランドや内容を思い出 させるか 「発見」=サービスを発見する←サービスをどう発見させるか 「期待」=なんらかの期待を持つ←どんなコンテクスト、どんな期待値を満たすか 「体験」=サービスを体験する←どのようなサービス体験を実現するか 「記憶」=サービスを記憶する←どう記憶させるか 「記録」=サービスや自分の投稿等を記録する←なにをどうどこにどのように記録させる か 「共有」=サービスの存在や獲得した情報を共有する←どこでなにをどのように共有させ るか 「貢献」=獲得し