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経済学って何を学ぶの?

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経済学って何を学ぶの? Powered By Docstoc
					6 財政政策の基本的構造
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この章では,税の徴収や,公共 サービス・公共投資など政府の 経済活動が,マクロ経済にどの ような影響を及ぼすか考察する. また,現代の日本における大き な政治課題である政府債務の累 積問題についても考える.
2008年度 マクロ経済学Ⅱ 6章 1

2009/11/23

大きな存在の公的部門
国民所得に対する租税と社会保障料の割合を国 民負担率 という(日本は2008年度当初予算で, 40.1%.米国34.5 %,スウェーデン70.7%).  さらに多くの国は税収不足から国債を発行し,財 政負担を先送りしている.これを含めた潜在的国 民負担率は,日本43.5%,米国39.6%,ドイツ 56.0%などとなっている.  このように,政府の経済規模は大きいため,マクロ 経済や金融市場の動向を大きく左右する.
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わが国財政の現状
 国と地方を合わせた長期政府債務は約778

兆円で,対GDP比でみると約150%に達する (2007年度末見込み).  2008年度の国の一般会計予算は約83兆円. 一方で税収は約54兆円しかない.不足の大 半は公債発行に頼っている.公債金収入が 歳入歳出予算総額に占める割合を公債依存 度という(30.5%).
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確認問題1.政府の規模
(1) 国民負担率とは何か? ― 国民所得に対する租税と社会保 障料の割合. (2) 現在の国と地方を合わせた日本 政府の長期債務残高はGDPの約何 年分か? ― 約1.5年分.
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確認問題2.日本政府の歳入歳出構造
(1) 平成20年度の国の一般会計の歳出項目か ら、構成比の大きいものを順に三つ挙げなさい. ― 社会保障関係費,国債費,地方財政費. (2) 同じく歳入面で、構成比の大きい税目を順 に三つ挙げなさい. ― 所得税,法人税,消費税. (3) 公債依存度は約何%か? ― 30.5%.
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政府の予算制約と財政の機能
 政府財政収支=租税収入-財政支出  これがプラスなら財政黒字,マイナスなら財

政赤字.赤字の場合は,公債(国債・地方 債)を新規に発行して,民間から資金を調達 する.  政府の財政は,一般に資源配分,所得再分 配,経済安定の三つの経済的機能を果たす.
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景気対策としての財政政策
 不況下で景気を刺激するための財政政策と

しては,減税と財政支出拡大がある.  減税としては,個人所得減税,投資減税,住 宅取得減税などがよく用いられる.  政府が意図的に財政赤字を拡大させること は景気刺激効果をもつ一方,景気が良くな れば,税収が増えて財政赤字は減る.
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確認問題3.財政の機能
(1) 財政の果たす三つの機能を挙げなさい. ― 資源配分機能,所得再分配機能,経 済安定化機能. (2) 財政赤字と景気の関係について説明し なさい. ― 政府が意図的に財政赤字を拡大させ ることは景気刺激効果をもつ一方,景気 が良くなれば,税収が増えて財政赤字は 減る.
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ビルトイン・スタビライザー
 景気動向により税*1と支出が増減し,財政が

経済安定化機能を果たすことをビルトイン・ス タビライザー(自動安定化装置)という.  所得税は,課税所得の増加により限界税率と 平均税率が上昇する累進構造をもち(図6-3), 所得再分配とともに自動安定化機能をもつ.  他にも法人税や失業保険などが自動安定化 機能を果たしている.
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確認問題4.ビルトイン・スタビライザー
(1) 累進課税とはどのようなものか? ― 所得水準の上昇とともに税率が 上がっていく所得税制のこと. (2) ビルトイン・スタビライザーの機能 を果たす財政制度を三つ挙げなさい. ― 所得税,法人税,失業(雇用)保 険など.
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国と地方政府
 日本では国と地方(都道府県と市町村)の税

収の比率が6:4,支出の比率が4:6である.  このギャプは補助金(国庫支出金など)と地方 交付税交付金(一般的な財源移転)によって 埋められている.  こうした国と地方の財政関係が,過大で非効 率な支出を招くなど歪みを生んでおり,その 打開のため地方分権が進められている*1.
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三位一体の改革
「三位一体の改革」とは、「地方にできることは地方 に」という理念の下、国の関与を縮小し、地方の権 限・責任を拡大して、地方分権を一層推進すること を目指し、補助金改革、税源移譲、地方交付税の 見直しの3つを一体として行う改革のこと。  このうち、税源移譲とは、国税を減らし、都道府 県や市町村に納める地方税を増やすことで、国か ら地方へ税源を移すこと。平成18年度税制改正に おいて、国から地方へ3兆円の税源移譲が実現。
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確認問題5.国と地方の財政関係
(1) 三位一体の改革とは何か? ― 地方交付税制度の見直し,補助金(国庫支 出金)の削減,国から地方への税源委譲の三者 を一体で進めていくことで,地方財政の無駄を なくしていこうとする改革. (2) 地方交付税交付金と補助金(国庫支出金)の違 いは何か? ― 地方交付税交付金は自治体にとって一般財 源となるのに対して,補助金は使途が限定され ていること.
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プライマリー・バランス
 わが国では1990年代以降,税収の落ち込

みと景気対策のための財政支出の増大で公 債残高が急速に膨らんでいる.  税収と公債費(利払い・償還費)を除いた政府 支出の差をプライマリー・バランス(基礎的財 政収支)という*1.  プライマリー・バランスがゼロであれば,とりあ えず公債残高の増加は制御可能である.
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確認問題6.プライマリー・バランス
・ 税収をT、国債の新規発行額を⊿B、国債の利払い を r B、それ以外の政府支出をG とする(T +⊿B =G +r B). (1) 通常の財政収支(黒字=税収ー支出)はどのように 表されるか? ― T – G –rB = –⊿B (2) プライマリー・バランス(黒字)はどのように表され るか? ― T – G =–⊿B +rB
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経済成長率と金利の影響
 政府債務の状態を判断する尺度として公債

残高の対GDP比がよく使われる.  分子の公債残高は公債利子率と同じ割合で 自然増し,分母のGDPの増加率は名目経済 成長率である.  したがって,名目成長率が利子率を上回って いれば,公債残高/GDP比は上昇しない.
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政府(中央・地方)財政のプライマリー バランスと名目成長率・名目金利

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2008年度 マクロ経済学Ⅱ 6章

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確認問題7.公債の持続可能性と金利・成長率
(1) 公債残高そのものよりも,その対GDP比を問題にす るのはなぜか? ― 公債残高の持続可能性を見るには,残高そのも のより経済全体の規模に対する比率が問題だから. (2) 公債残高の持続可能性(サスティナビリティ)にとって, 利子率と経済成長率のもつ意味について述べなさい. ― PBに変化がない状況で,前者が後者を下回るか ぎり,公債残高の対GDP比は無限に高まっていくこ とはない,つまり持続可能である.
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公債負担の問題
 公債償還のための将来世代への増税は,将

来世代の所得分配に影響するが,世代全体 に負担を転嫁するかどうかは自明でない.  公債発行による政府消費拡大は,金利上昇と 民間投資抑制(クラウディングアウト)を招くの で ,将来の潜在GDPが低下し,負担となる.  一方,公共投資は将来便益を生むので,公債 財源を充てることは正当化しうる.
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確認問題8.公債の負担
(1) 財政赤字のクラウディング・アウト効果とは何 か? ― 財政赤字すなわち国債の新規発行が利子率 の上昇を通じて民間投資を抑制すること. (2) 公債が将来世代にとって負担となるのはどの ような場合か? ― 公債で調達された資金が政府消費に当てられ る場合(いわゆる赤字国債)と,公共投資に当てら れても(いわゆる建設国債),その生産性への効果 が民間投資のそれよりも低い場合.
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政府債務の拡大と財政破綻
 公債への信頼低下は,公債価格を下落させ,

経済全体の利子率を上昇させる.  利子率上昇は,政府財政のいっそうの悪化, 銀行の資産価値低下,企業やローン世帯の 金利負担増大,株価・地価下落,クラウディン グアウトなど,多くの問題を引き起こす.  政府債務の膨張に伴う金利上昇は,制御困 難で,ときに財政インフレという終焉を迎える.
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リカードの等価定理
 人々が合理的であれば,公債発行をして所得

税減税をしても,可処分所得*1の増加は将来 の増税に備えてすべて貯蓄にまわるので,景 気刺激効果はない(リカードの等価定理).  遺産というものを考えると,この定理は世代を 超えて成立する(バロー=リカード定理) .  また,遺産動機が強いと,高齢化が進んでも, 貯蓄率はあまり下がらない可能性がある.
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ライフサイクル消費仮説(補足説明)
 人は若年期・壮年期に貯蓄をして資産を蓄

積し,引退後の高齢期にそれを取り崩して 消費にあてると考えられる.  これを消費のライフサイクル・モデルという が,人々がこのような消費行動をとれば, 人口の高齢化はその国のマクロ家計貯蓄率 を低下させる.

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ライフサイクル仮説に基づく消費・貯蓄
所得・消費・ 貯蓄
貯蓄残高 所得

F
貯蓄残高 消費 の取崩し

借入

C
E O(就職) A
若年期 壮年期

C′

B (退職) D (死亡)
老年期

解説:就職して働き始め、所得はEF 線に沿って増大するが、B 歳で退職後、所得はゼロになる。消費に ついては,生涯にわたって毎年一定の消費OC をすると仮定する。A 歳までは消費をするために借入れ をする。A 歳からB 歳までは所得が消費を上回るので貯蓄をし、若年期の借入れを返済するとともに、退 職後に備えて資産を蓄積する退職後のB 歳からD 歳は資産を取り崩して消費にあてる。
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人口高齢化と家計貯蓄率:1996-2006年度
14.0 12.0 10.0

家 計 貯 蓄 率 ・ %

10.4

11.4 10.7 10.0

8.0 6.0
5.2

7.9

4.0 2.0 0.0 12 14 16

4.6

3.5

3.9

3.4

3.2

y = -1.68 x + 36.9
R² = 0.895

18

20

22

24

老年人口比率・%
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確認問題9.リカードの等価定理
1)リカードの等価定理とはどのようなものか? ― 国債を発行して減税を行っても,人々がそれ は将来の増税に等しいと認識し,すべて貯蓄に回 してしまうと,減税が景気刺激効果をまったく持た なくなる(クラウディング・アウト効果もない)こと. 2)人口の高齢化と貯蓄率の間には一般にどのよ うな関係があるか? ― 人口高齢化により一般に貯蓄率は低下する.

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