An educational design methodology is also proposed for the synthesis of differential gear train type

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							【実践論文】                                    指南車の機構設計と製作

                               田中 稔(岩手大学)、小林光男(工学院大学)
                               田中道彦(信州大学)、小山俊春(岩手大学)


                 MECHANICAL DESIGN AND MANAGEMENT OF MANUFACTURING
                                       OF SOUTH POINTING CHARIOT

Minoru TANAKA: Iwate University
Mitsuo KOBAMYASHI: Kogakuin University
Michihiko TANAKA: Shinshu University
Toshiharu KOYAMA: Iwate University

Abstract: In this study, a new educational system for the mechanical design and manufacturing of south pointing
chariot has been investigated and proposed from the view point of history of technology. Educational models of south
pointing chariot are found to be effective for the practice student teaching of mechanical gear devices for students. An
educational design methodology is also proposed for the synthesis of differential gear train type, planetary gear train
type and fixed axis type of south pointing chariot.
Key Words: south pointing chariot, differential gear, education, modeling



1.はじめに                                                        工夫したものである。本論文では、このうちの遊
  筆者らは、既に遊星歯車と差動歯車の機構に関                                       星歯車と差動歯車の機構を応用した指南車の機
して一連の教育 1)と研究 2)を行ってきている。最                                    構と構造に関する報告を行う。
近では、差動歯車機構内でのバックラッシュでの
新しい観点から、自動車の操舵角制御のための舵                                        2.指南車について
角センサについての開発指導を行った 2)。この際、                                        歯車の歴史は古く,洋の東西を問わず揚水装置
従来の機構学や機械運動学のテキストからでは                                         や織機などに用いられていた.これらの歯車は木
得られない遊星歯車機構や差動歯車機構の運動                                         製の円筒車の外周に簡単な突起を付けた程度の
特性について、認識を新たにすることが多かった。                                       もので、機械工学で扱う産業用の歯車とは程遠い。
そこで、差動歯車機構の応用例として技術史教育                                        近代的な歯車が誕生したのは,時計で計時に使わ
上 3)もっとも有名な指南車について取り上げ、工                                      れた歯車機構が発明された 9 世紀半ばである.そ
学部のみならず教育学部の学生達への機構学の                                         の後、滑らかな回転運動が行える歯形の研究も進
教材としていきたい。                                                    み、高精度な歯車が天文機械式時計などに用いら
  指南車は、和時計や茶運び人形などの機巧(か                                       れるようになった。
らくり)と同じように、多くの技術史研究家によ                                           歯車列あるいは歯車機構に関しては、1901 年に
って紹介あるいは試作研究されている                            3,4)。技術史         ギリシャ南部アンティキティラ島沖の沈没船か
教育学会関係においても、材料は全て木製の指南                                        ら発見されたものが有名である。アンティキティ
車が紹介されている 5)。これらの論文においては、                                     ラ島沖で発見された機械は太陽と月の運行をシ
読者が指南車の仕組みや歯車列理論を全て理解                                         ミュレ-ションする極めて高精度な天体用の機
している専門家である事を前提として報告され                                         器であり、技術史上初めての差動歯車機構である
ている。                                                          と言える。
  本研究では、機構学や歯車工学を知らない教育                                           実用的かつ近代的な回転むらの少ない差動歯
学部技術科学生にも、人形が一定方向を指す指南                                             19
                                                              車機構は、 世紀初めに蒸気自動車用に開発され、
車の仕組みと機構の理論が十分理解できるよう                                         現代の自動車でも使用されている歯車技術であ

注)日本技術史教育学会 2007 年度全国大会(長野)にて講演
る。遊星歯車機構とは、この差動歯車機構の3つ             ける相対性の原理より、キャリアの回転を固定し
の回転軸うちの1つを固定させて、他の2つを入             た場合の各歯車の角速度に、機構全体を一体とし
力と出力の軸としていく差動歯車機構のことで              て回転させた角速度を重ね合わせれば、遊星歯車
ある。即ち、回転角速度0の固定軸との差動にな             の任意歯車間での角速度の関係が求められる1,2)。
っている。
 技術史上最も興味を引く差動歯車機構の応用                       C
例の1つは、中国の歴史書「宋史」に記述された                                    C    P
指南車である 3,4)。指南車とは、車上の指南人形で                       P
ある仙人像の右手が、車が走行中に如何なる方向                                A            A
に向きを変えても、常に南を指す仕組みになって
いるものである。「宋史」には、指南車の仕組み                               B
                                                               B
は、歯車による構造であることが書かれているよ
うである。中国古代王朝では、水運儀象台の天文
時計の場合と同じように、指南車は絶対王権の鼓
舞や祭礼の時に曳きまわされたようである。
 指南車については、技術史教育関係者のみなら                          図1 遊星歯車機構
ず歯車研究者などによる多くの試作品があり、こ
れらを枚挙するには いとまない。差動歯車機構                 2つの太陽歯車BとCの歯数をZB、ZC とし、
を使った初めての実験模型は、イギリスの George         回転角速度を各々ωB、ωC とする。遊星歯車の機
Lanchester によって試作された 4,5)。この後、国    構全体を一体として回転させた角速度を、即ちキ
内・外の多くの技術史研究家がこれに似た様々な             ャリアの回転角速度をωA とする。また、キャリ
模型を作っているが、本研究では Lanchester タ       アの回転に対する太陽外歯車の相対的な回転角
イプの指南車を中心に、機構構造理論と試作した             速度を(ωB-ωA)とすると、この相対回転は遊
実験模型について差動歯車機構の観点から述べ              星歯車を介して、歯車Cはキャリアに対して、Z
る。                                 ・(ωB-ωA)/ZC で相対的に回転する。この相
                                   B

                                   対回転速度にキャリアの回転角速度ωA を加えた
3.差動歯車機構                           ものが、歯車Cの絶対回転角速度ωC となる。
 歯車機構において、噛合っている歯車対の一方                 この歯車Cの絶対回転角速
の歯車が、回転するキャリアで支えられながら他                          ZB
                                        C   A  ( B   A )        (1)
の歯車まわりに公転しながら噛合うとき、公転し                          ZC
ながら噛合う歯車を遊星歯車、中心にある歯車を             を、キャリアAの角速度ωA で表わすと
太陽歯車と呼んでいる。これは太陽の周りを自転                       ZC            ZB
                                     A           C           B    (2)
しながら公転する遊星(惑星)の関係に似ている                    Z B  ZC      Z B  ZC
からである。太陽歯車は外歯車のみでなく、内歯             となる。式(2)は、キャリアAと歯車B、Cの3
車であっても太陽歯車と呼ばれる       6)
                           。歯車には   つの機素に関する角速度の関係式、即ち差動の式
色々な種類があるが、本論文で単に歯車と言えば             となっている。これら3個の機素のうちの1つを
円筒平歯車を指し、他に傘歯車と言えば直交傘歯             固定させて、残った2つの機素を入力と出力軸と
車を指している。                           したものが遊星歯車機構と呼ばれ、変速機構に使
 図1は、太陽外歯車Bと太陽内歯車Cと、これ             われる 1)。
ら2つの太陽歯車と噛合っている遊星歯車Pを                  もし、歯車B、C、Pを平歯車ではなく、図2
示したものである。遊星歯車Pは、キャリアAに             のような傘歯車であるとすれば、ZB=ZC となる
よって軸受を介して支えられている。運動学にお             から、式(2)は
  A 
         1
            B  C             (3)
                                         図4はωB、ωC が同符号すなわち同回転方向な
         2                              ら、差動歯車装置内では傘歯車は負荷がかかるこ
となる。このキャリアAをプロペラシャフトの動                  とはなく、回転角速度ωA が(ωB-ωC)/2 でト
力伝達軸に連結し、歯車BとCの軸を車輪に連結                  ルクを伝えない空回りをしていることになる。
すれば、自動車工学で使用されているデファレン                   いま、ωB とωC が指南車の左と右の車輪での角
シャル機構になる。                               速度であり、車輪間の距離 2r、車輪の半径a、
                                        指南車の旋回の回転角速度Ω、また旋回の回転半
          ω   A                         径Rとする。車輪の角速度は、

                                                 ωA

                                                      P1      P2
                             ωC
                                                  A
                                            ωB
                                                                    ω
   ωB
                                                                     C




               図2 差動歯車
                                            図3 遊星歯車を噛合せた差動機構
 傘歯車は製作が難しいため、ピン歯車やカナを
用いた差動歯車機構を作る事も考えられるが、学                          Rr          Rr
                                         B         、 C               (7)
生達にモジュ-ル、歯数、インボリュ-トなどの                           a            a
基礎知識に馴染ませるために、本研究では歯車を                  である。ここで、a=rとすれば、ωA=-Ωと
用いている。この差動歯車装置を、平歯車の組合                  なる。この事は、ωA=-Ωの角速度で回転する
わせによって作りたいなら、図 3 に示すキャリア                軸を指南車の旋回面に垂直に取り出せば、旋回の
Aで支えられた遊星歯車P1、P2 を直接に噛合わ                角速度Ωを相殺させることができる。
せれば良い。キャリアAの角速度をωA、またキャ                 旋回方向が逆の-Ωであり、k=R/aとして
リアAに対する P2 の相対角速度をωP とすれば、                 B  (k  1) 、  C  (k  1) (8)
                                        であるなら、ωA=Ωとなる。この事は、キャリ
  B   A  Z P  P Z B         (4)
                                        ア軸に傘歯車対を取付けて、垂直な出力軸に人形
  C   A  Z P   P Z C        (5)
                                        を取付ければ、人形は一定方向を向いていること
となる。遊星歯車P1、 2 の歯数をZP としてある。
           P                            を示している。この人形に手を水平に掲げさせ、
ここで、ZB=ZC であるから、式(2)が得られる。              指を指す方向が南になるように初期設定すれば、
 このような差動歯車機構の傘歯車の左右の出                   指南車となる。図 5 は、このような原理で考えた
力軸に、3つの歯車と2つの歯車の「中心固定の                  指南車の基本概念図である。キャリアの回転が取
歯車列」を接続したものが図4である。外歯車同                  り出されて、この回転は傘歯車で垂直に変換され
士の噛合では、速度は回転方向が逆転して伝わる。                 ている。
出力軸に3つの歯車が接続していれば、回転方向
は正転で、2つの歯車が接続していれば、回転方                  4.指南車の製作
向は逆転となるため、図4の差動歯車機構で                     図 6 は、前章までの議論に基いて作成した指南
                                        車の機構図である。車体の左の車輪軸は、角速度
  A 
         1
            B  C             (6)
                                        すなわち回転角の変化率を反転させるために、1
         2
の関係が得られる。                               対の歯車(2つの歯車)を介して、差動歯車装置
の左の入力軸に接続されている。車体の右の車輪    く、指南機構として無負荷状態での回転をしてい
からは、左の車輪と車輪中心軸を揃えるため3個    ることになる。指南車を牽引する力は、車体から
の歯車を介しているが、車輪の角速度の方向は2    軸受を通して、直接に車輪軸に伝えられる。この
回反転され、正回転そのままの方向で、差動歯車    牽引する力は、車輪の接地面での転がり摩擦力と
軸に接続される。キャリアの回転角速度ωA は、   釣合っている。
3個の中心固定の歯車列を介して傘歯車対に接      写真1は、図6の構造にしたがって製作した指
続し、回転軸が垂直に変換されている。        南車である。差動機構部以外には平歯車を使用し
                          ているため、差動機構の入力軸と車輪軸との間に
              ωA          は、回転方向を調節するための歯車列が、機構を
                          複雑に見せている。また、差動機構のキャリア部
                          に接続させる平歯車の数を3にするか2にする
   ωB              -ωC    かで、これに接続する傘歯車の上側に傘歯車を噛
                          合わせるか、下側に傘歯車を噛合わせて人形に接
                          続させるかで構造が異なる。

  ωB               ωC




 図4 入力軸の向きが互いに異なる差動機構              E


              Ω                                 D



         ωA




                                        A
                   ω
                                                    2a
   ωB
                    C

                                            C
                                   B
        図5 基本概念図                       2r

 傘歯車を介して鉛直になった回転軸に人形を           図6 指南歯車構造図
取付けて、指南車らしい外観にしてある。これに
より、指南車が旋回により車体の向きを変えると    5.学生指導
き、車の旋回角度を相殺するように人形が車体に     工学部機械工学の学生は機構学で歯車や歯車
対して反対方向に回転する。車を外部から見てい    列について学習するが、理論だけではなく、実物
る人には、人形は一定の方向を向いているように    に触れて遊星歯車機構を肌で体験させることは
見える。                      非常に重要である 1)。また機構学で紹介している
 ここで、機構学上で注意しなければならないこ    遊星歯車機構と差動歯車機構の仕組図では理解
とは、後述するように、差動歯車機構を介した左    できない学生もおり、実験ではできるだけシンプ
右の車輪間には動力の伝達がないことである。こ    ルな歯車列を使い歯数とモジュ-ルおよびピッ
の差動歯車機構は、動力を伝えるためのものでな    チ円直径などの関係を理解させている 1)。
 教育学部技術科学生に対しては、ポンチ絵から    と、モジュール1の歯車を用いる場合、平歯車型
遊星歯車の機構を理解させる。次に、差動歯車の    は歯車軸の位置決めを精度良くしなければなら
機構を勉強させ、機構的に簡単なチェ-ンブロッ    ない。遊星歯車型は平歯車型よりさらに高精度の
クや自動車のデフ装置などを理解させる。指南車    位置決めが要求される。傘歯車型は歯車軸が一直
については、従来報告されている種々の構造を集    線なので、教材用として市販されているモジュー
めさせる。指南車の複雑に見える仕組みを理解さ    ル 0.5 の歯車でも組立が可能であった。
せるためには、要点となる差動部がどこにあるか、    傘歯車型はモジュール 0.5 の教材用歯車を用い
単なる方向変換のためだけの歯車列との見極め     ても、製作・組立てが容易であり、車体もコンパ
をさせる。構造が理解できたら、車体などの簡単    クトにでき、費用も安いことから、このタイプで
な部分はアクリルで自作させた。歯車は市販のも    の教材化を推奨する。
のを用いて差動歯車機構と方向変換の歯車列と
を組立させる。使用した歯車はモジュール1の小
形のものである。歯車同士が噛合うように歯車中
心を合わせるのは、学生にとって機械の組立に関
する大きな勉強と経験になったと思われる。
 本研究では、更に写真1の指南車を基本にして、
様々な構造の指南車を作成させた。1つは写真2
に示す構造で、車輪からの回転方向の変換を、傘
歯車の噛合わせで行うもので、車輪と差動歯車へ
の入力軸とが同軸線上に配置できる。他の1つは
写真3に示すもので、図3に示すような2つの異
なる太陽歯車に噛合う2つの遊星歯車同士を直       写真2 車軸と中心をあわせた試作車
接に噛合わせる遊星歯車タイプの指南車である。




                              写真3 図3を応用した試作車


                          6.歯車機構内を伝わる力
                           写真2の指南車では、直交傘歯車を使うことに
                          よって、車輪軸と差動歯車の入力軸とを同じ高さ
                          にすることができた。同じように、傘歯車を用い
   写真1 図6に基づいた試作車         れば、図6の構造を図7に示す指南車構造に書き
                          替えすることもできる。指南車は人形の回転だけ
 各タイプの歯車列の組立てやすさを比較する     を制御するのが目的であるが、一般の歯車列は、
回転と動力を伝達するのに使われる。工学部での                 今、MLA を駆動トルクとすると、遊星歯車は歯
学生実験で歯車列を扱うには、動力を測定して定               車CからFI、歯車BからFII の力を受け、その大
量的に扱うには、実験装置が複雑となりすぎる。               きさは、遊星歯車の公転半径をRA として、
したがって、図1のタイプの差動歯車機構では、                                 M LA
                                       FII   FI                                  (10)
太陽内歯車Cを固定させた図1の最も簡単な実                                  2RA
験モデル(写真4)を製作して、学生に手回しで               となる。キャリアA、歯車B、Cの伝達トルク
駆動させ、回転比を測定させている 1)。                         M
                                     MA=-MLA、 B=-MLB および MC=-MLC は、
                                                      ZB
                                       MB                 MA                        (11)
                                                   Z B  ZC
                                                      ZC
                                       MC                 MA                        (12)
                                                   Z B  ZC
                                     である。さて、MLA を式(2)の両辺に掛けると
                                                     ZC                  ZB
                                      A M LA             M LA  C           M LA  B
                                                  Z B  ZC            Z B  ZC

                                             M C C  M B B                         (13)

                                     となっている。角速度とトルクの積は動力である
  写真4 遊星歯車機構の学生実験モデル 1)              から、入力の動力は歯車Bと歯車Cの動力の和と
                                     なっていることがわかる。摩擦などによるエネル
                      ωA             ギ-損失の無い系では、当然の事ながら、単位時
                      A              間あたりの仕事量すなわち動力は保存されてい
              B
                                     る。遊星歯車機構は、キャリアAまたは歯車B、
                                     あるいは歯車Cのどれかが固定され、他の2軸間
                                     での動力伝達が行われるが、動力は保存されてい
ωB                    C       ωC     る。


                                             MLC      ,ωC

                                                              Ⅰ   P
                                                          C
                                                                      A
      図7 差動部を横にした指南車                              ωB
                                                              Ⅱ
                                                                          ωA

                                                                  B
 この実験で差動歯車機構を実地体験させてか                     MLB                                 MLA
ら、機構学の講義や演習などで動力についての学
習をさせる。図8は、キャリアA、太陽外歯車B                                    図8 差動歯車
および太陽内歯車Cに与えた駆動または負荷ト
ルク MLA、MLB、MLC を示している。遊星歯車P            さて力の方向と回転の方向を較べてみると、遊
は、歯車Cとの噛合点 I、歯車Bとの噛合点 II で           星歯車Pは歯車Cから常に駆動される方向に回
噛合いながら、                              転している。また、遊星歯車Pは歯車Bを駆動し
                                     ている。    ω
                                         これは、 PFI>0およびωPFI<0から
      1Z         Z       
  P   C C  B  B         (9)
      2  ZP
              ZP     
                      
                                     わかることである。したがって、噛合点 I、II で
                                     の噛合効率をηI、ηII とすると、
の角速度で回転する。
                                        3.学生に、大きさや形状が異なる指南車を具体
            I II M LA
 MB                            (14)       的に複数製作させた。
      ( Z C Z B )   I II
                                        4.片側の車輪の速度を差動機構入力軸へ、差動
                                           運動に必要となる、逆転させる方法の異なる
               M LA
 MC                             (15)      3つの指南車を作成した。
        1   I II Z B / Z C
                                        5.試作された指南車モデルは、工学部学生への
となる。駆動トルク MLA を与えるには、図1の差                  機構学教材としても活用するなど、学際的な
動歯車機構の歯車B、Cには、噛み合い損失の有                     教育効果があげられる。
る無しに係わらず、MLB=-MB および MLC=-
MC の負荷トルクが与えられねばならない。指南                 8.あとがき
車の台座に据え付けられた人形には、負荷が無く、                  本論文の内容は、信州大学で開催された 2007
空回りする仕組であるから,車輪から差動歯車機                  年度技術史教育学会の全国大会で講演したもの
構に伝わるトルクも零である。もし僅かな噛合損                  である。その際、本研究で試作された写真 1、 2、
失や軸受での損失があった 4)としても、その影響                3 の指南車の実物模型を公開した。学会関係者・
は無視できるほど小さい。                            講演会参加者のみならず当日の特別講演の聴講
 指南車の前進、後退および旋回は、両脇の車輪                  に訪れた多くの市民・学生の注目を集めたのも本
の回転により行われる。この車輪には軸受および                  研究成果の1つと考えている。
接地面での摩擦により回転負荷トルクが働く。車                   また、従来抽象的に捉えられていた指南車を初
輪の動きは、指南車の操縦と指南人形の動きの2                  めて機構学的 6,7,8)に解説したことも意義のある
つに係わっている。車輪に働く負荷トルクが如何                  ことと思われる。
に回転系に影響を及ぼしていくかを論じてみる
                                        参考文献
のも学生教育に重要なことである。
                                        1.小林光男、工学院大学機械工学科学生実験解
                                          説書「実験番号 5・6:遊星歯車装置の実験」
7.まとめ                                   2.田中稔、田中道彦、小林光男、2K-H 型遊星歯
 本研究では、従来から論じられてきた指南車を、                   車機構におけるバックラッシによる回転角
                                          誤差について、日本産業技術教育学会誌、
将来の技術教育に携わる教育学部技術科学生を
                                          Vol.49、No.2、2007、115.
主たる対象として、機構を理解させ、実際に設                   3.会田俊夫、   歯車の技術史、     開発社、1981、170.
計・製作させた。また、試作された指南車は工学                  4.岸佐年・ほか 4 名、指南車の力学的考察と復
部学生の教育にも使われた。                             元、第 3 回日中機械技術国際会議論文集、
                                          2002、中国・南京、198.
 得られた成果をまとめると次のようになる。
                                        5.白井靖幸、卒研での指南車の製作、技術史教
1.指南車の仕組みを機構学的に分かり易く説                     育学会誌、Vol.2、No.1、14、2000.
   明できる方法を模型の設計と製作を通じて                  6.田中道彦、小林光男、遊星歯車と機構学、設
   検討した。                                  計工学、1998、pp327-332.
                                        7.田中道彦、オイラーサバリ式と機構学、設計
2.歯車は市販のものを用い、指南車の組立から
                                          工学、Vol.42、No.2、2007、pp111-117.
   歯車の噛合条件とモジュ-ルの関係などを                  8.田中道彦、平面4節リンクによる関数創成に
   教育学部技術科学生に把握させた。                       ついて、設計工学、Vol.43、No.12、2008、
                                          掲載予定.

 要旨:本研究では、指南車の機構学的設計と製作に重点をおいた技術史教育的な試みがなされた。指南車
 の教材モデルは機械の伝動装置の実際的な教育に役立つことも確かめられた。教育的な観点からの方法論
 が差動歯車機構型、遊星歯車機構型また固定軸型の指南車の組立方を提案した。

						
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